KEKの先端加速器試験施設、世界最小のビームサイズを実現

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ATF2beamline

ATF2ビームライン

KEKの先端加速器試験施設(ATF)のATF2は、ILCの最終収束系の試験ビームラインだ。ここでは、電子をナノメートル※レベルまで絞り込む実験が行われている。ATF2では2つの主要目標を掲げており、第1は極小ビームサイズの実証、そして第2は安定したビームの実証だ。5月に米シカゴで行われた国際ワークショップで、この第1目標における素晴らしい成果が報告された。世界最小のビームサイズ「55ナノメートル」が達成されたのである。

 

ILCで衝突させるビームサイズは高さ6ナノメートルだ。ATFとILCではエネルギーが異なるため、ATFで37ナノメートルのビームサイズが実現できれば、ILCでは5ナノメートル以下のビームを実現できることになる。そのため、ATFでは37ナノメートルを目標値に実験が続けられている。6月末から7月にかけて、より規模の大きな国際会議が相次いで行われ、ここでは5月の報告よりさらに小さな「44ナノメートル」という数字が報告された。ILCの仕様まで、あと一歩のところまで到達したのである。

 

注目すべきは、サイズだけではなく、その再現性の高さだ。ナノメートルという極小サイズのビームを、加速器の停止期間を挟んで、短期間で再現することが可能になったのである。また、ビームの安定性も増した。ほとんどの実験で、チューニング無しに30分から60分の間、安定的な運用を行うことができたのだ。

 

ATFは現在夏期の停止期間中だ。現在の課題を解決すべく、秋には運転が再開される。

 

※1ナノメートルは1メートルの10億分の1