素粒子物理学の進展を加速させるILCテクノロジー・ネットワークの可能性

ILC ニュースライン

※この記事は、2023年11月27日に発行されたILC NewsLineのディレクターズ・コーナーの翻訳記事です。

ILC加速器に関する国際推進チーム(IDT)のワーキンググループ2には、約50名の加速器研究者がいる。研究開発項目として5つの加速器分野で合計18のワークパッケージが提案され、技術提案書にまとめられている。メインリニアックと超伝導高周波領域に関する3つのワークパッケージ、電子陽電子源領域に関する8つのワークパッケージ、ダンピングリングに関する3つのワークパッケージ、ビームデリバリーシステムに関する2つのワークパッケージ、ビームダンプに関する2つのワークパッケージがある。技術提案書は、SLAC国立加速器研究所のTor Raubenheimer氏を委員長とする審査委員会によって審議された。これらのワークパッケージ(WP)の成果はインカインドでの貢献として国際的に共有される。

2022年、我々はこれらの中から特に喫緊を要する重要項目を15のワークパッケージ(WP)にまとめた。これらはタイム・クリティカルWPと呼ばれ、プライムWP(WPP)としてプレラボWPから抽出される。全体のコストは1,400万ドル、120FTEが見込まれている。WPPを実施するための枠組みはILCテクノロジーネットワーク(ITN)と呼ばれ、ILCのための研究開発を推進することを目的とした新しい枠組みであり、10月にCERNで開催されたインフォメーションミーティングは、WPPに参加する加速器研究機関の各々がどのような貢献に興味を持っているかを聞く最初の機会となった。その研究内容は、おおまかには、超伝導高周波(SRF)、粒子源、ナノレベルビームの3つに分かれている。それぞれにILCだけでなく、先端加速器にとって重要な技術開発項目が含まれている。例えば、SRFはその優れた出力効率から高エネルギーで大電流のビーム加速に不可欠な技術であり、近い将来における産業・医療分野への応用が期待されている。また、物質の構造を探る研究では偏極電子や陽電子などの粒子線源が用いられるため陽電子を発生させるターゲットは高出力の二次粒子(中性子を含む)を発生させる技術一般に共通する課題である。高いビーム品質を得るためのナノビーム技術も、放射光技術、産業医療用途のマイクロビーム開発、機械学習を含むビーム調整技術など、幅広い応用が期待されている。ITNが担う国際共同研究の枠組みは、ILCに関心のある研究室だけでなく、先端的な加速器を開発している世界中の研究室にとっても魅力的であるに違いない。多くの研究グループが参加し、さまざまなワークパッケージに関心を寄せてくれたことをうれしく思う。今後は、各研究所の関心とITNが実施する作業パッケージをマッチングさせる作業を開始する。

ILCは国際協力によって実施されるプロジェクトであり、ITNも規模は小さいものの、国際共同による成果が求められている。ITNでは、技術的な成果だけにとどまらず、世界的研究機関の連携によりプロジェクトが遂行されるという研究形態自体の価値も大きい。

今回のITNミーティングには約28の研究機関が参加し、ネットワークをキックオフする非常に有効な機会であった。各研究所が関心を示しているWPPのリストを作成し、各研究所には、リストの確認と各WPPに対する研究所の担当者名を送ってもらった。必要に応じて、IDT-WG2 のメンバーが WPP の詳細を説明し、WPP のどの部分を引き受けるのかという具体的な協議へと進むだろう。WPPの重複を避けつつも各ラボの関心に応えられるような調整が必要で、技術的な側面だけでなく、IDTの理事会がプロセス全体を調整することも不可欠だ。その後、必要であれば、KEKと世界中の研究所とのMoUの締結手続きを進めることになる。今回はITNの世界的な展開に期待を持つことができた非常に有意義な会議であった。

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