宮崎物理学会 出張報告 大森 恒彦 (KEK 講師)

コラム

横谷氏のスライドより

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2016年9月21日〜23日の4日間、宮崎大学で日本物理学会があり、これに出席してきたので報告する。今回の学会は直前に台風16号が接近して、一時は各地から宮崎行きの飛行機が飛ばないのではないかと危惧された。しかし幸いギリギリのタイミングで台風の勢力が弱り、かなり苦労した人もいた様子であるが、なんとか殆どの参加者が学会に間に合って宮崎に入ることができた。

p1640812-v2観光立県の宮崎は空港も道路も綺麗である。宮崎市の中心部に大淀川という大きな川が流れ、川沿いには観光ホテルが並んでいる。これに直交するメインストリート「橘通り」はフェニックスが植えられて美しく整備されている。宮崎大学は市の中心部からバスで50分ほどの郊外にキャンパスをもっている。

今回の学会ではILC関連の企画講演として「LHC最新結果を踏まえたTeVコライダーによる新物理探索(浜口幸一氏・東大理)」「ILC計画の現状とアップグレード(横谷馨氏・KEK)」の2つの話があり、200人ほどの聴衆あり立ち見も出る盛況ぶりであった。浜口氏はLHCでHiggs粒子以外の新粒子が見つかっていない現状を踏まえ、その中でILCが果たすであろう重要な役割を超対称性探索、暗黒物質探索などを挙げて整理した。浜口氏は500GeVのILC基本計画の意義に加えて、基本計画の延長である1000GeV(1TeV)アップグレード、そしてさらに将来を見据えた3000GeV(3TeV)アップグレードが可能になった場合について、ILCの意義を丁寧に説明した。横谷氏はILC加速器の500GeV計画が十分に技術的に成熟しており、すぐにでも建設開始可能であることを示し、1000GeVまでのアップグレードも、同じ技術の範囲内で可能であることを示した。そして高温超電導薄膜を使って超電導空洞の性能を大幅に引き上げる研究や、2ビーム方式を用いた新しい加速方法の研究が進行していることを紹介し、3000GeVに到達する可能性を論じた。両方の講演とも活発な質疑があり、ILCに関する大きな期待と関心がうかがえた。

今回の学会ではこれ以外にもILCに関する多数の講演があり、またLHC、KEKB、SuperKEKB、ニュートリノ、J-PARCなどに関する講演を通じて、素粒子物理学が次のス
テップに進みつつあることを感じることができた。

講演する横谷氏

講演する横谷氏

浜口氏のスライドより

浜口氏のスライドより

講演する浜口氏

講演する浜口氏

学会のための臨時バス

学会のための臨時バス

橘通りでバスを待つ学会参加者(左)と誘導員(右)

橘通りでバスを待つ学会参加者(左)と誘導員(右)