ILC計画に関するKEKの取組み方針をローザンヌの国際会議で発表

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スイステック・コンベンションセンターに集まった、会議参加者

KEKは、4月8日(月)、9日(火)にスイス、ローザンヌで開催された国際会議で、国際リニアコライダー(ILC)計画に関する今後の取組みに関する方針を発表しました。この国際会議は「リニアコライダー・コミュニティ・ミーティング」と呼ばれるもので、電子・陽電子リニコライダーの実現を目指す世界の研究者約100名が集まり、今後の計画推進について議論しました。次世代の高エネルギー物理学の実験施設としてリニアコライダーは、超伝導加速器技術を用いるILC計画と常伝導技術によるCLIC計画が、国際的なリニアコライダー・コラボレーションのもとで推進されています。今回の会議で、山内正則KEK機構長は、ILC計画に関する日本の状況について講演を行い、KEKの今後の取組みとして以下のような行動計画を発表しました。

◇文部科学省と密接な連絡のもと、国際ワーキンググループを設立する◇ILC計画の学術会議のマスタープランへの提案やシンポジウムの開催を通じて、国内の広い学術コミュニティからILCへの理解を得る活動を進める◇文部科学省が、米国とすでに設置しており、また今後フランスやドイツと設置を目指す、ILCに関するディスカショングループの活動に協力する

◇KEKの持つ研究施設を用いて、国際研究チームと共にILCの研究開発を進める

講演をする山内KEK機構長

 

ILC計画については、3月7日の国際将来加速器委員会(ICFA: International Committee for Future Accelerator)及びリニアコライダー国際推進委員会(LCB: Linear Collider Board)で文部科学省が見解を発表し、現時点でILCの日本誘致を表明するには至らないものの、この計画に関心を持って国際的な意見交換を継続するとの方針を述べました。これに対しICFAは声明を発表し、この関心の表明を、ILC実現への道筋に沿った重要なマイルストーンと見なすとしました。今回のKEKの方針は、これらの見解に沿って、ILC早期実現のため、KEKの取る具体的な方策を明らかにしたものです。ローザンヌの会議での研究者の議論の結果は、現在進行中の欧州素粒子物理戦略のアップデートの議論に活かされます。

用語

・欧州素粒子物理戦略(The European Strategy for Particle Physics)
およそ7年ごとに、欧州の素粒子物理コミュニティは当該分野の優先順位と戦略の更新を行う。次期の更新作業は2018年10月に欧州合同原子核研究機関(CERN)理事会によって開始された。更新のプロセスは2年間に渡り進められる。研究者から素粒子物理研究の現状と将来の方向性に関する意見が集められ、それらのインプットが公開シンポジウムで発表、議論される。それらの議論をまとめた「Physics Briefing Book」が、主にCERNメンバー国の代表から構成される「戦略グループ」に提出される。戦略グループは新たな戦略案を起草し、CERN理事会に提出する。次期戦略は2020年5月に予定されている特別セッションでCERN理事会により採択される予定。このプロセスは欧州が主導するものだが、世界の多くの科学者が参加して進められる。日本における国際リニアコライダーの展望は、戦略の決定に大きな影響を与える。

・ICFA:国際将来加速器委員会(ICFA:International Committee for Future Accelerators)
高エネルギー物理研究に用いる加速器の建設と運用における国際協力の促進を目的に設立された組織。 高エネルギー物理研究に関与する世界各地の専門家から構成されており、現在の委員は 18 名。

・LCB:リニアコライダー国際推進委員会(LCB: Linear Collider Board)
ICFA の下部組織で、ILC の加速器及び測定器に関する研究開発活動と計画推進の活動を行うリニアコライダー・コラボレーション(LCC:ディレクター リン・エバンス)を監督する。

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