*この記事は、2021年6月1日発行のILCニュースラインに掲載された、中田達也IDT議長のディレクタースコーナーの翻訳です。
2020年8月、「ILC準備研究所(プレラボ)」の設立準備を進める組織である「ILC国際推進チーム(IDT)」が、国際将来加速器委員会(ICFA)によって設立されました。プレラボは、国際リニアコライダー(ILC)建設開始に向け、必要となる技術開発とエンジニアリングを完了することを目的とする組織です。ILCの設立準備を進める時期には、関係国の政府当局間において、ILC施設の建設と運用の費用と責任の分担、およびILC研究所の組織構造と運営について合意を結ぶことも期待されています。
このほど、IDT は ILC 準備研究所の提案書を完了しました。これはIDT設立後10ヶ月で初となる、主要なマイルストーンの達成となります。この提案書は、プレラボの組織的枠組み、実装モデル、および作業計画の概要を示すものです。提案書の完成には、 3 つのワーキング グループが主要な役割を果たし、多くの人々からの貢献がありました。ワーキンググループ1は、任務、ガバナンスモデル、組織構造、およびプレラボ立ち上げの手順を担当しました。ワーキンググループ 2 は、ILC 加速器およびサイト建設に必要な技術開発および工学準備作業を特定しました。ワーキング グループ 3 は、研究意欲を駆り立てる ILC 物理プログラムを開発するための戦略について議論しました。執行委員会では、それらの文書を取りまとめ、編集を行いました。この提案書作成の課程で、参加者数がどんどん増えていき、非常に心強く感じました。
これからIDT の活動は、この提案書に記載した方向性に沿って、プレラボを設立するための各ステップを実現する、という次のフェーズへと入ります。加速器の技術開発および工学準備作業については、計画をさらに練り上げるとともに、これらの活動に関心と専門知識を持つ研究者や研究所を特定する必要があります。実験コミュニティには、ILCで行う物理研究の可能性をさらに探求し、実験の具体的な設計をまとめ上げるための動機づけとサポートが必要です。プレラボの開始プロセスに関する議論は、主要なラボ間で開始される必要があります。
同様に重要なファクターは、プレラボの設立を達成するためには、どのようなプロセスが必要なのかを理解することです。プレラボの活動は、実際のILCとは異なり、政府当局が直接関与するのではなく、研究所のレベルで推進されます。ただし、ILCに関心を持つ研究所の経営陣がプレラボ活動の責任分担について本格的に議論するためには、ILCのホストとプレラボの支援への関心を示唆するような、日本政府からの何らかのシグナルが必要でしょう。並行して、我々はILC に対する世界からのより多くのサポートを得るために、さらに努力します。
今後もプレラボの早期実現に向けて全力で取り組んでまいります。エキサイティングな時間は我々の目の前です。