KEKの超伝導リニアック試験施設(STF)のクライストロン
クライストロンは大出力の電波発生装置。クライストロンで生成した電波を、ビームを加速する「加速管」へと送り込みます。加速管の中でビームは送り込まれた電波に押され、加速されます。この装置の名前についている「トロン」は、サイクロトロンやシンクロトロンなど、加速器の名称によく使われています。これはギリシャ語の「トロネーイン」(回転する)に由来しています。
クライストロンも、大ビーム電流・低エネルギーの小型電子加速器です。クライストロンの最終部には出力空洞と呼ばれる金属で出来た茶筒状の装置があり、ここを大電流の電子ビームが通った時に電波が発生し、その電波が加速管に送られるのです。でも、クライストロンの「トロン」の由来は、ギリシャ語の「エレクトロン」(電子)。1939年にクライストロンを発明したアルバート・W・ヒルジョイは、装置内の電子が振動しながら電磁場と相互作用する様子から命名したそうです。この開発によってマイクロ波信号の増幅と制御が実現されました。レーダーシステムや通信システムなど、さまざまな分野で広く活用されています。