加速器図鑑❹ ダンピングリング

加速器図鑑

ILCのダンピングリング完成予想図 ずらりと並んだ磁石が粒子の向きを整える ©︎Rey. Hori

ILCは「直線型衝突加速器」ですが、実はその中央に周長3.2キロメートルの円形加速器があります。この円形加速器は「ダンピングリング」と呼ばれ、電子と陽電子を衝突しやすくするために重要な役割を担っています。
 
ILCではそれぞれ200億個の電子と陽電子の塊(ビーム)を加速・衝突させます。200億個といっても電子も陽電子もとても小さいので塊の中身はスカスカです。ビーム中の粒子同士を衝突させるためには、ビームサイズを小さくして粒子の密度を高める必要があります。
 
ILCのビームは、ちょうど虫眼鏡で光を絞るように、磁石を使ってサイズを小さくします。でも、中の粒子は色々な方向を向いて広がろうとするので、そのままだとうまく絞れません。そこで、ビームをダンピングリング周回させ、中の粒子を同じ向きに整列させるのです。
 
ビームがダンピングリングを通過するのは0.2秒。その間に2万周します。こうして向きが揃ったビームを厚み6ナノメートルまで絞り、電子と陽電子の衝突反応を起こしやすくさせるのです。