私は戦後間もなくでございましたが、宮城県の北の方の山の中で育ちました。その当時は食料不足の大変な時代でありましたが、私の家の前には池がありまして、その池の中にはたくさんのカエルやイモリが住んでおりました。山の中には果物もあれば、木の実もございました。今でもよく憶えておりますが、池の中にヘビがやって来まして、一匹のカエルを捕まえて食べようとしていました。私たちは何んとかカエルを逃がそうと思って石をぶつけました。そしたら、ヘビがかま首をもたげて我々の方を襲ってきました。我々は驚いて散り散りになって逃げた憶えがございます。その時代は大変な時代でしたが、我々子供達はどの山に行けばどこに栗があり、どこに行けばアケビがなっているかと言うのをちゃんと知っておりました。家ではヤギや羊を飼っておりましたから、あるときには出産の場に出会ったりしたこともあります。自然に生物と一緒に暮らしていた、という憶えがございます。

中学校に入りましてから化学に興味を持っていましたから、どこかの化学の教室に入ろうと思っていまして、実験室をまわってみた憶えもございます。生物の実験室、化学の実験室、物理学の実験室、いろいろと見てまわりました。私は化学の実験室に一番興味を惹かれました。棚の中には見たこともないような、ビンにいろいろな薬品がぎっしり詰まっておりましたし、いろいろなビーカーや試験管の器具がたくさん並んでおりまして、先輩の学生達がちょっと偉そうに実験をしてるのを見て、何とか私たちも仲間に入りたいな、と思っておりました。物理の実験室へまいりますと、ちょっと大きい機械がありましたが、なんとなく冷ややかで、人もおりませんし、あまり魅力的でございませんでした。そういうことで、中学高校の六年間を、毎日毎日化学の実験室に入りこんで過ごした憶えがございます。

高校三年の頃になってはじめて、物理学、しかも理論物理学、数学をつかう物理学に だんだん興味を惹かれるようになりました。数学の難しさは、たいへん私に興味を覚えさせました。

大学に入ってからは、数学と理論物理学いっぺんとうになったわけでございます。このように科学との出会いというのは、いろいろな場合があるのだろうと思います。人によっては数学しか興味がない、生涯数学をやる人もおります。数学だけは苦手だという人も中にはおります。 人間の科学との出会いというのはいろんな場合、いろいろなケースがあるのだろうというふうに思っております。教育というのは難しいものです。 一番大切なことは、どういうところに自分が興味をもつかということを、自分で見つけて、それに熱中していくことだろうというふうに、思っております。

みなさんも、是非、このホームページで、自分にどういう興味があるのか、御自分で見つけだしていただきたいと思います。




素粒子原子核研究所 藤井 恵介博士
大強度陽子加速器計画推進部 永宮 正治部長
素粒子原子核研究所 石橋 延幸博士
物質構造科学研究所 新井 正敏博士
物質構造科学研究所 五十嵐 教之博士
物質構造科学研究所 林 慶 さん
東京大学物性研究所 原沢 あゆみ さん
加速器研究施設 森 義治博士
高エネルギー加速器研究機構 菅原寛孝前機構長
江崎玲於奈博士
素粒子原子核研究所 山田作衛前所長
物質構造科学研究所 木村 嘉孝前所長

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