ドイツ電子シンクトロン研究所には、ドイツが西欧6か国と共同で建設した、世界で初めての電子・陽子衝突装置(HERA)がある。周囲6キロメートルのトンネルに、電子用リングと陽子用リングを設け、30GeVの電子と920GeVの陽子を2か所で正面衝突させる。この装置では、レプトンとクォークの間の相互作用を精密に調べることにより、新相互作用、新粒子の発見を目指す。電子・陽子衝突は、LEP、TEVATRON 、LHCなどにおける同種粒子の衝突実験と相補的な役割をもつ。特に電子をプローブとして、陽子の構造、更にはクォークの構造を探る上ではもっとも適した加速器であり、陽子の大きさの1000分の1程度までの構造を探索できる。実験は大型の国際共同実験ZEUSとH1が認められ、1992年より電子/陽電子と陽子の衝突実験が本格的に進行している。
本機構は、東京大学原子核研究所時代の1988年より、測定器の建設時期からZEUS実験に参加している。衝突から発生した粒子のエネルギーを測定するカロリメータと粒子識別のためのシリコン検出器を他国と共同建設した。さらに、反応を検出し、データ収集を起動するかどうかを決定する初段トリガー装置を製作した。後者ではHERAの短いビーム交差間隔に対応するため、世界で初めてパイプライン型のトリガーシステムを開発した。
1992年の実験開始から、光子による陽子の内部構造の探索等で成果を上げた。まず、陽子内部のクォークとグルーオンの分布を広い運動領域で測定し、特に微小運動量を担ったクォークとグルーオンが非常に急激に増加することを明らかにした。この観測は、レッジェ理論と構造関数を統合的に把えるような新しい理論の発展への手がかりとなり、量子色力学を基本にしたモデル形成に指針を与えた。衝突装置の性能向上により多くのデータが蓄積されるようになり、新粒子探索の感度があがってきている。標準モデルの精密な検証に加えて、新しい相互作用やレプトクォークなどの新粒子による可能性もあり注目されている。更に多くのデータを蓄積して確認する必要がある。このため2000年にはHERAの高輝度化が予定され準備が進められている。




研究者にインタビュー
素粒子原子核の研究って何?
物質構造科学の研究って何?
加速器とは?・・・VRML
ごあいさつ

素粒子・原子核物理学とは
物質の究極にせまる素粒子理論とは?
物質の多様性を探る原子核物理とは?
素粒子・原子核の研究はどんな役に立つか?
粒素粒子・原子核・物質科学の世界を探る多彩な粒子
謎の粒子ニュートリノ
Bファクトリーって?-Bファクトリーでの物理
Bファクトリーって?-Bファクトリーでの実験-CP不変性の破れの測定
Bファクトリーって?-Bファクトリーでの実験-BELLE測定器
KEKBファクトリー加速器
日米科学技術協力
ATLAS国際共同実験
HERA国際共同実験

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