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実験課題は、B中間子の崩壊と、対応する反B中間子の崩壊がどれだけ違うかを知ることである。対象となる粒子を優先的に大量生成する手段は、電子・陽電子衝突である。衝突エネルギーを10.58GeVに合わせると、bと反bクォークとが結合したΥ(4S)粒子が生成され、これは瞬時に必ずBとのペアに崩壊することが分かっている
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多くの事例につき、このBとの崩壊で発生したすべての粒子を検出して、詳しく調べるのである。
CPの破れは、Bとの特定の状態への崩壊確率の違いや、崩壊の時間分布の違いに現れるはずである。後者は、違いが大きく現れると予言されている、特に有望な場合である。ここの事例につき崩壊するまでに走った距離を測定して、寿命について情報を得る。これを可能にするために、違ったエネルギーの電子と陽電子を衝突させ、Υ粒子に大きな運動量を与え、相対論的効果でBの走る距離を伸ばしてやる。ただし、測定対象となるスケールは、時間でピコ秒、距離で100から200ミクロンである。 |
B中間子対の崩壊が測定器に記憶された様子(シミュレーション) |
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建設中の測定器で、一つの事例がどのように記録されるかを、コンピュータシミュレーションで描いたのが左図である。Bとの崩壊で発生した多くの粒子が入り組んでいる。このうち、記号のついた粒子軌跡は
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という崩壊の結果であり、残りは0からのものである。 |
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ところで、B中間子は非常に多くの状態へ崩壊できるため、代表的な特定の状態が出現するのは10万個に一つ程度に過ぎない。しかも、Bとの崩壊の差を確立するには、数千万の事象を観測しなければならない。このため、加速器にも測定器にも最先端の技術が要求されている。
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