PF

2023S2-001 STXMを用いた小惑星リュウグウ研究の深化や生命進化研究の推進

実験責任者 所属 ステーション 期  間
高橋 嘉夫 東京大学 19A/B 2023/4〜2026/3
 水の惑星である地球がどのように形成されたかや生命がどのようにして生まれたかは、人類普遍の問いである。このようなテーマに対して、リモートセンシング、物理化学的モデル実験、火星表面における探査車の活躍などにより様々な研究がなされてきたが、我々は、科研費・新学術領域研究「水惑星学の創成」において、日本の関連分野の研究者を結集して、「水惑星の誕生と進化」や「水惑星における物質循環」をより実証的に解明する手法を開発してきた。一般に隕石試料などは鉱物組織が微細であることから、これらを対象にした分析では、非破壊で高い空間分解能を備え、様々な元素や有機物を対象にした分析が可能で、最小限の試料から最大限の物理化学情報を抽出することが望まれる。こうした観点からみた場合、有機物(炭素)を含む多数の元素の化学種の分布を30 nmの空間分解能で与えるSTXM (Scanning Transmission X-ray Microscopy)は、惑星科学の物質分析に不可欠である。そこで我々は、PFのSTXMを小惑星リュウグウや関連資料の分析に適用し、大きな成果を挙げてきた(Nakamura et al., Science, 2022など)。
  本課題では、STXMを用いた小惑星リュウグウ研究の深化や生命進化研究への適用を進めるために、「リュウグウ母天体が外側太陽系でできたことを示すためのアンモニウム分析」、「リュウグウ試料中の流体包有物中の有機物のSTXM分析」、「蛇紋石とサポナイトの還元作用の比較とFischer-Tropsch型反応の可能性」、「Mgケイ酸塩の存在解明による水環境の推定中」、「地球初期生命体の痕跡の追跡」などのテーマを推進する。またその推進のために必須な転換電子収量法や蛍光収量法などの検出系や水フローセルなどのin-situ分析用セルなどの手法を確立し、STXMの高度化を図る。その結果、リュウグウ母天体が太陽系のどこでできたか、揮発性元素は地球にどのようにもらされたか、母天体中の水でどのような化学進化が起きたか、などに回答が得られる可能性がある。また、これらを通じて、STXM研究に多くの研究者の参入を得て、惑星表層や地球史において重要な様々な水-鉱物-有機物-生命相互作用に焦点を当て、素過程解明に基づく地球惑星科学を発展させることも重要な目的である。
関連課題
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成果