国際共同設計チームのプロジェクトマネージャーに、山本明氏

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ILC通信14.indd現在、国際共同設計チーム(GDE)では、国際リニアコライダー(ILC)計画の概要を説明する基準設計報告書の公表の次の段階として、技術的な詳細を記述する工学設計書の完成をめざしています。共同研究を行う国々の異なる条件を満たし、地域のバランスを維持し、研究開発の資金や人員を配分しなければなりません。また、決められたスケジュールを維持しながら、強固な工学設計書を完成する必要もあります。
この管理の枠組みを強化するために、GDEの組織内に新たに「プロジェクトマネージャー」という役割が設けられました。北米からはマーク・ロス氏(米フェルミ国立加速器研究所)、欧州からはニコラス・ウォーカー氏(ドイツ電子シンクロトロン研究所)、そしてアジアからは山本明氏が、5月にハンブルクで開かれた国際会議で選出されました。

 

 

 

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BESS実験時の山本氏(前列右から2人目)写真提供:NASA

山本氏は、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の超伝導電磁石の専門家です。山本氏は、ヨーロッパにある、欧州合同原子核研究機関(CERN)における、世界最大の陽子・陽子衝突加速器である大型ハドロンコライダー(LHC)計画にも深く関わっています。衝突点における収束・四極超電導電磁石を開発し、CERNとKEKの協力関係の構築に大きく寄与しました。また、同LHC計画に使われるATLAS測定器用の巨大な電磁石の開発にも携わっています。他には、米国ブルックヘブン国立研究所で行われているg-2実験に参加し、極めて精密にコントロールされた磁場を発生させる電磁石をつくりあげるなど、世界中で数々の実績があります。

 

 

 

 

「新しい分野に果敢に挑戦する優れた研究者であると同時に、緻密な技術者でもあるというのが第一印象でした」─野崎光昭氏
私が山本さんと一緒に仕事を始めてから、もう20年ほどになります。当時、山本さんと私は、日米の共同実験プロジェクトであるBESS実験(宇宙粒子線観測気球実験)に取り組んでいました。山本さんは、日本側の研究チームのリーダーとして、プロジェクト遂行の要としての活躍していました。特に難しかったのはスケジュール管理です。気球実験は、気象条件によって、観測可能期間が1年のうち数週間しかありません。チャンスを一度逃すと、1年間待たされることになります。そのため、確実に装置を準備し成功させる必要があったのです。山本さんはプロジェクトリーダーとしての優れた手腕を発揮して、見事、研究を成功に導きました。

 

 

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左:野崎光昭氏(GDEアジア地区チーム代表)、右:マーク・ロス氏(プロジェクトマネージャー)

「山本さんは主張する人」─マーク・ロス氏
私が山本さんに対する印象は、会議においてよく発言する人、そして、いつも的確なポイントをついて物を言う人、だということです。これは彼の豊富なプロジェクトマネジメントの経験に基づくものだと思います。彼がチームに加わったことは、われわれが北京の会議で定めたスケジュールに沿って、スケジュールを進めていくうえで、とても心強いことです。