米国Snowmass会議以降のILC国際推進チーム物理・測定器ワーキンググループについて

ILC ニュースライン

※この記事は、2022年11月17日に発行されたILC NewsLineディレクターズコーナーの翻訳記事です。

このたび、村山斉は米国で開催される素粒⼦物理プロジェクト優先順位付けパネルの議長に任命され、ILC国際推進チーム(IDT-WG3)の物理・測定器ワーキンググループの議長職を退任することになりました。IDT、そしてILCの物理ケースの策定とコミュニケーションに貢献された村山さんに深く感謝するとともに、これからの新たなチャレンジでの成功を期待しています。また同時期に、Claude Valléeが任期終了します。副議長として共に過ごした期間、親密で楽しい協力関係を築いたClaude Valléeに感謝します。

さて、あらたに3名のメンバーを迎えることとなり、大変嬉しく思っています。ブラジルのリオデジャネイロにある CPBF から Carsten Hensel がスピーカーズビューローに加わり、岩手大学の成田晋也とアメリカのアルゴンヌ国立研究所の Jinlong Zhang が測定器と技術研究開発グループを強化するため、あらたに加わりました。WG3 の副議長には、物理ケース研究グループの Michael Peskin、ソフトウェア・コンピューティンググループの Daniel Jeans、MDI グループの Roman Pöschl、測定器・技術研究開発グループの Jinlong Zhang の4名が共同で就任する予定です。新しい副議長とより一層密接に協力し合えることを期待しています。

CEPC、CLIC、FCCee、ILCが強力なレポートを提出した米国でのスノーマスコミュニティ研究が終了し、欧州でのECFAヒッグスファクトリー研究の作業が勢いを増している今、IDT-WG3の役割と優先順位を再調整する時期に来ています。e+e- Higgsファクトリーの展望は進化しています。Snowmass Energy Frontier レポートの結論は、できるだけ早くヒッグスファクトリーを建設する必要性を強調するものでした。新しいヒッグスファクトリー技術の提案も出されており,特出すべきはC3(Cool Copper Collider/低温銅製空洞衝突型加速器)です。これらの新しい提案にはまだ基礎的な研究開発が必要です。日本では来年度にKEK の ILC 研究開発予算が 2 倍になる可能性が期待されており、ILC-Japan 組織が ILC に関わるコミュニティを広げています。CERN は FCC のフィージビリティスタディに投資しており、電弱精密物理プログラムの後にくヒッグスファクトリーに発展する大型円形 e+e- コライダーである FCCee に重点を置いています。個々のプロジェクト以外にも、ECFA測定器研究開発ロードマップはCERNの新しい研究開発協力によって実施されており、ECFAヒッグスファクトリー研究は分析方法や測定器の側面など、すべてのヒッグスファクトリー提案に共通する科学的疑問に関する研究を促進しています。

このような複雑な状況の中で、IDT-WG3は何を優先すべきでしょうか?長年にわたるリニアコライダーやILCの研究で得た知識を共有することはもちろんのこと、私たちのコミュニティ、特に世界中の若手研究者の間でくヒッグスファクトリーへの支持を強化する必要があります。米国のスノーマス・プロセスを引き継いだECFAのヒッグスファクトリー研究は、我々が関与すべき重要なフォーラムを提供しています。様々なプロジェクトの長所と短所は、科学の領域外の政治的・戦略的議論に後退することなく、科学的根拠に基づいて議論される必要があり、同時に全てのくヒッグスファクトリーが提供する大きな可能性を強調すべきです。

測定器技術の限界を押し広げ、人間や機械の知能に基づいた高度なソフトウェアアルゴリズムを開発することは、単一の将来の衝突型加速器プロジェクトにとどまらず、多くのエキサイティングな研究の可能性を提供します。特に、資源が乏しい現在の困難な時代にあっては、我々の未来に対する投資を適切な水準で実現するための挑戦をしなければなりません。 しかし、そのためには、私たちの科学的根拠をより鮮明にし、他の分野の研究者や政策立案者、社会に対してそれを伝える努力をさらにしなければいけません。単に「精度が高い」というだけでは十分な議論とは言えません。私たちは、宇宙の根源にかかわる大きな謎というエキサイティングな物語を、わかりやすく、人々を惹きつける方法で伝える必要があるのです。

日本でILCが実現するかどうかまだ分かっていません。しかし、ヒッグス粒子は、宇宙と私たちの存在の起源を探るために、これまで誰も行ったことのないところへ大胆に行くための宇宙船であり、そのワープドライブとし電子衝突型加速器が必要だということは分かっているのです。ぜひ、参加して実現させましょう。

ジェニー・リスト 物理測定器ワーキンググループ新座長

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※写真はヒッグス、電弱、トップファクトリに関するECFAワークショップの参加者。©DESY