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2. トリスタン計画までの状況 2.1 トリスタン加速器 2_1_3 加速器システムの動作 トリスタン加速器システムは、3つの要素で構成される(図1)。先ず線型加速器(リニアック)が、電子及び陽電子ビームを2.5GeVまで加速する。このリニアックは放射光施設への入射器でもあり、陽電子ビームは200MeVの大電流電子ビームで発生してから加速される。入射蓄積リングは2.5GeVビームを次々と受け、十分な量を蓄積したら8GeVまで加速し、直ちに主リングにバンチとして打ち込む。主リングはこのバンチを蓄積しておき、つまり8GeVで周回させておき、最終的に等間隔に位置した2つの電子バンチ(時計回り)と2つの陽電子バンチ(反時計回り)が揃うまで待つ。そして全部をいっぺんに30GeVまで加速してから、エネルギーを固定して蓄積運転に入る。電子バンチと陽電子バンチとは、必ず実験室、つまり実験装置を突き抜ける真空パイプの真ん中で交差する。交差するときに、四極磁石収束システムによってビームを強く絞ると、電子と陽電子の衝突が可能になる。この衝突実験モードに入ると、各実験チームはデータ収集を開始するのである。ひとつのバンチは、約1011個もの粒子の固まりであるが、交差時に素粒子反応が起きるのはごく稀である。したがって、交差回数を非常に多くすることにより、素粒子反応のチャンスを増やす。通常は、同じビームを失うこともなく約2時間も周回させる。これは109 回も交差させることになる。その上でビームを捨て、またリニアックから始る新たなビームを得て、同じことを繰り返すのである。 こういう複雑な運転は、多数の加速器要素の健全性や正確なタイミングで続く一連の操作によって可能になる。同時に、実験装置の状況や放射線管理上の観点などについての判断も必要である。したがって、トリスタン加速器には各種のモニターが設置され、全体の監視と操作は計算機制御のもとに行われる。その制御点数は約3万点にのぼる。 |
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