世界で初めて実用化した「ナノ・ビーム方式」と世界でも類を見ない大電流ビームで世界最高のルミノシティを目指す加速器です。
目的・ビジョン
衝突型加速器の性能を表す重要なパラメータの一つである1秒当たりの衝突頻度、すなわちルミノシティを前身のKEKB加速器が達成した2.1×1034cm−2s−1から飛躍的に上げることを目標にアップグレードされたのがSuperKEKB加速器です。素粒子物理学の基盤である「標準理論」を超える物理を探索する素粒子実験のための衝突型円形加速器です。
概要
地下11mに掘られた一周約3kmのトンネル内に70億電子ボルト(7 GeV)の電子リングと40億電子ボルト(4 GeV)の陽電子リングが並べて設置されているのがSuperKEKB加速器です。電子・陽電子線形加速器(LINAC)からそれぞれのリングに入射された電子ビームと陽電子ビームは、1秒間に10万回というほぼ光の速さでリングをそれぞれ反対の向きに周回し、1か所で衝突します。この衝突点にはBelle II(ベル・ツー)測定器が設置され、電子ビームと陽電子ビームの衝突反応を記録しています。
SuperKEKB加速器では、地下のトンネルや多くの設備は前身のKEKB加速器、あるいはさらに前のトリスタン加速器時代のものを再利用していますが、新しいアイディアである「ナノ・ビーム方式(補足説明を参照)」を実現するために大幅な改造を行いました。この「ナノ・ビーム方式」はSuperKEKB加速器が世界に先駆けて実現しました。そして2019年から本格的な衝突実験を開始し、現在も様々な問題を少しずつ解決しながら、ルミノシティの向上のため研究を進めています。
粒子と反粒子の性質のごくわずかな違いについてさらに詳しく調べたり、ごく稀にしか起こらない粒子崩壊モードを探索したりするためには、膨大な量の衝突反応を起こす必要があります。SuperKEKB加速器ではより高いルミノシティで衝突実験を行って大量のデータを集積することで、現在の素粒子物理学の基盤である「標準理論」を超える物理を探索し、宇宙の成り立ちに迫ります。
補足説明
ルミノシティという数値は1秒間あたりの素粒子反応の頻度を決めるもので、ビームを構成する粒子の数に比例し、ビームを輪切りにした時の断面積に反比例します。したがって、いかにたくさんの粒子(電子や陽電子)をビームの中に入れるか、いかにビームを細くできるかが成功のカギとなります。たくさんの電子や陽電子をビームの中に入れるということは、つまり、大電流のビームにするということです。また、ビームの断面はとても薄い楕円形をしていますが、SuperKEKB加速器ではその楕円の高さ(薄さ)が1マイクロメートル以下、つまりナノメートルの単位で測るような極小の値になります。研究者はこうしたビームを用いた加速器を「ナノ・ビーム方式の加速器」と呼んでいます。SuperKEKB加速器では、大電流ビームとナノ・ビーム方式により、飛躍的なルミノシティ向上を目指します。
関連するWebページ
SuperKEKB https://www-superkekb.kek.jp/ 英語(研究者向けサイト)
Belle II実験 https://belle2.jp/ja/ 日本語
Belle II https://www.belle2.org/ 英語(研究者向けサイト)