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3. 研究成果 3.5 実験技術の開発 3.5.2 強磁場(3テスラ)超伝導ソレノイド電磁石 VENUSとTOPAZではソレノイドを薄肉にして電磁シャワーカウンターをその外に設置する方式をとったが、AMYでは電磁シャワーカウンターを内側に設置する方法をとった。これだとソレノイドの物質量の制限がなくなり、強磁場にして中央飛跡検出器とミューオン検出器をコンパクトにすることが出来る。この他にも、強磁場を通過する電子がシンクロトロン放射を出す性質を利用した電子の識別が可能になることや、ビームと残留ガスとの衝突から発生する多くのバックグラウンド粒子が強磁場のため、ビームパイプの中にトラップされて検出器の邪魔をしない、などいくつかの利点がある。 中心磁場3テスラを出すAMYコイルの構造は8層巻で、内径と外径がそれぞれ2.39mと2.58m、長さが1.54mである。クライオスタット真空容器の有効内径は2.22mで、飛跡検出器が占める空間での中心磁場からのずれは10%以内になっている。浸漬冷却方式をとり3テスラ時での蓄積エネルギーは40MJとなりTOPAZソレノイドの2倍にあたる。 3テスラ・ソレノイドをコライダー検出器に使用したのは世界で初めての試みで、飛跡検出器と電磁シャワーカウンターがこのような強磁場の中で精密測定を可能にするようにうまく作動するのかは未知の課題だった。この方式が成功を収めたことで、その後のコライダー検出器設計に与えたインパクトは大きい。LHCの汎用測定器のひとつのCMSは4テスラ・ソレノイドを使おうとしている。 |
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