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トリスタン計画報告書TOP
 高エネルギー物理学研究所長挨拶
 高エネルギー委員会委員長挨拶
 1. は じ め に
 2. トリスタン計画の概要
 3. 研 究 成 果
 概略
標準理論の精密検証とその予言する新しい現象の発見
標準理論を越える新しい現象の探索
光子・光子コライダーとして
実験技術の開発
 薄肉超伝導ソレノイド電磁石
強磁場(3テスラ)超伝導ソレノイド電磁石
低温機器の自動・長期運転
高速・大量データ収集用ファーストバスシステム
計算機とネットワーク
 4. トリスタンと加速器科学
 5. 周辺分野との関わり
 6. ま と め
 List of Figures
 List of Tables
 グラビア写真集
 
3. 研究成果

3.5 実験技術の開発

3.5.3 低温機器の自動・長期運転


前記の超伝導ソレノイドのためのヘリウム液化・冷凍システムは、実験にとっての基幹設備であり、常に安定に稼働していることが要求される。3つの実験室には、それぞれのソレノイドの個性に応じた冷凍システムが用意された(表12)。その操作は、下記の3つに大別される;
  • 予冷/加温:室温から4K にわたる上、冷却質量が大きいため、操作に日数がかかるだけでなく、ソレノイド系の伸縮は数 cm にも及ぶ。仕様に応じた温度分布のバランスを保持して進めなければいけない。
  • 定常運転 :一回の実験サイクルは3〜6カ月に及び、ヘリウムや窒素、冷却水や電力などの安定供給の確保のため、細部にわたる健全性の監視が必要である。
  • 緊急回避 :予期できない異常事態に際し、ソレノイドを保護しながら安全条件を整えなければならない。
これらのための監視および制御操作シーケンスは、まず各実験室での試運転によって確立された。次に、長期にわたる本格実験に向け、富士実験室に用意された中央制御室から3システムを集中監視・自動制御するため、すべては二重化した光ファイバー・データリンクにより結ばれた。ローカルな監視用ミニコンピュータと制御システムは、既に規格統一されていた。すべての運転は、法令に従い、研究所に用意した保安管理体制のもとで行われた。

保守・管理のための各種検査は、実験休止期間に定期的に実施された。毎年の保安検査および自主検査、そして3年ごとの開放検査は、高圧ガス取締法に従って遂行された。さらに制御システムや制御弁などの諸要素についても、点検・調整が毎年行われた。

制作以来の各装置の累積運転時間は、表12に記したように4万から5万時間に達した。この期間に、低温機器がもっとも恐れる電力供給トラブルなども何回か発生したが、安全のための自動操作シーケンスがいつも予定通りに作動し、ソレノイドを守るとともに、実験再開までの回復時間を最短にとどめた。

3システムを合わせた故障率を累積運転時間の関数で見ると、初期の故障は1000時間以内の短期で急減し、その後の故障率は 1000 時間に1回におさまっている。そのほとんどは短時間で回復したものであり、99.3 % とという高い稼働率が保たれた。つまり、実験遂行にとり、ほとんど支障がなかった。このような大規模の低温装置を、これほど長期にわたって安全に自動運転できた技術と経験は、非常に貴重なものであり、他のプロジェクトにも生かされつつある。

 

設置場所富士実験室筑波実験室大穂実験室
設置時期1985年4月1985年7月1985年7月

冷凍サイクルクローズド・サイクルクローズド・サイクルクローズド・サイクル
冷凍能力500W (4.2K)300W (4.4K)300W (4.4K)
液化能力150/h100/h100/h
圧縮機形式スクリュー式(2段)スクリュー式(2段)スクリュー式(2段)
圧縮機流量2,300Nm3/h1,800Nm3/h1,500Nm3/h
液化窒素貯蔵量15,00010,0009,700
冷却対象VENUSソレノイドTOPAZソレノイドAMYソレノイド
冷却方式二相流強制間接冷却二相流強制間接冷却浸漬冷却
冷却時間14日5日6日
液化He量21040500

総運転時間49,200h45,700h41,800h

  Table 12: 実験用 He 液化・冷凍装置


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