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4. トリスタンと加速器科学 4.2 加速器技術開発 4_2_2 APS空洞 トリスタンはリングの半径 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() そこで、まず検討された空洞はDAW(Disk-and-Washer)型空洞であった。この空洞は、軸対称の空洞内電磁場計算なら可能であった当時、ワッシャーが空洞内に中吊りされた構造ではあるが、シャントインピーダンスとして45MΩ/mもの計算値が得られ、 実際の空洞でもその90%程度は得られるであろうとして期待されていたものである。 しかし、実験的研究が進むにつれて、軸対称構造を崩さざるを得ないワッシャーの支持棒によるシャントインピーダンスの低下がどうしても避けられないことが判り、実際にも12セルの実機では27MΩ/m程度まで落ちてしまった。また、複雑な構造のため空洞に誘起される高次モードの評価が難しく、高い電流での運転に支障をきたすかもしれないとの理由から、それまでの通常の空洞より高いシャントインピーダンスが得られてはいるものの、トリスタンへの採用は断念された。 代わって、なるべく計算可能な軸対称構造を保ちながら、しかも高いシャントインピーダンスを得る構造を探すことになる。短い周長のリングで高い加速電圧を得るために、 加速空洞をなるべく稠密に配置することも空洞自身のシャントインピーダンスを上げることと同様に重要となり、なるべく多くのセルを連結した空洞であることが望まれる。 このような多連結空洞が安定に働くためには、運転するモードの群速度を大きくとり、 セル間のエネルギーのやりとりがスムーズに行われることが重要である。この点、既存の大型蓄積リングで使用されている空洞はわりにシャントインピーダンスが高いが、5セル程度まで連結するのがやっとであった。そこで、シャントインピーダンスをあまり落とさずに群速度を増やすにはどうすればよいだろうかということになる。 さて、多連結空洞は、一種の周期構造として取り扱うことができる。周期構造内の励起モードで、2/ ![]() ![]() ![]() |
ところが、図64に示されているように、加速に寄与しないセルを短くすればシャントインピーダンスの低下は抑えられる。これは機械構造的には2重の周期を持っているので、「2重周期構造」と呼ばれる。しかし、単にセル長を2重周期にしただけでは、図65に示した2本に分岐した分散関係をとってしまい、分散関係の傾斜が群速度であることを考えると、本来2/![]() ![]() ![]() ![]() この構造は、建設当時に所長であった西川氏らが、1960年代に精力的に研究した空洞の形式でもある。 空洞製作方法は、空洞を輪切りにした形状を鉄で製作し、空洞内面になる所にはピロリン酸銅のメッキ浴で約100μmの銅メッキを施す。こうしてできたリング状のパーツには、旋盤加工により外周に近い所一周にわたってエッジが形成され、最終的にTiG溶接で接合される。溶接時の収縮力により、エッジには線圧200Kg/cmがかかり、充分な電気的接触を確保し、理想的なQ値の90%近くを実現している。 実際の空洞には、図63からわかるように、空洞本体の他に、(1)カプラー:9加速セルに1個ついており、クライストロンから、導波管を通して送られるRF電力を空洞に入力する、(2)チューナー:各加速セルについていて、空洞壁にロスされる電力のために空洞本体が温度上昇し、空洞寸法が変化して周波数がずれるのを補償する、(3)HOMカプラー:空洞内に誘起される加速モード以外の空洞モード(HOM)とビームとの結合を弱くし、空洞がビームの安定性を損なわないようにする、等のコンポーネントが組み込まれて使用される。 全ての空洞は、定格入力電力の2倍までの動作試験を行い、カプラー、チューナー等含めた空洞システムの検査合格後にトンネルに配置された。 また、104台の9セル空洞は、少しづつ直径の異なる10種類に分類されて製作されており、これによって高次モードの周波数を分散させビーム不安定性を抑える設計がしてある。 |
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