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4. トリスタンと加速器科学 4.2 加速器技術開発 4_2_4 超伝導四極電磁石によるミニベータビーム衝突システム 2.1.1で述べたように、ルミノシティーを上げるためには衝突点でビームを出来るだけ細く絞る必要がある。トリスタンではこの目的のために、強力なレンズの役目をする8台の超伝導四極電磁石(QCS)を開発し、富士、日光、筑波、大穂の4実験室のビーム衝突点の両側に1台ずつ設置し、1991年より約4年半にわたり実用に供してきた。 ここで開発、使用された四極電磁石は図2、図3、図4のように衝突実験用測定器に内部に埋め込まれるものであった。そのため本磁石は、(1)非常にコンパクトで、かつ高い磁場勾配を発生する、(2)実験用測定器のソレノイド磁場との干渉を避けるため、鉄ヨークの無い空芯の超伝導磁石である等の特徴を有するものである。その主なパラメーターは、全長:1.45 m、内径:0.14m、最大磁場勾配:70T/m、磁場勾配の均一性誤差:5×10-4以下であり、この種の四極磁石としては世界一級の高磁場磁石であった。この磁石により衝突点のベータ関数を半減することができ、ルミノシティーの倍増を実現した。なお、このシステムでは、超伝導磁石の位置をリモートコントロールで精密に調整するための精密架台も開発・使用された。図69に富士衝突点に設置したQCSを示す。 超伝導磁石を使うためには、それを極低温(〜4.4K)に冷却する必要がある。このため全自動化された4つの液体ヘリウム冷凍設備を開発し、トリスタンの各実験室に設置した。図70に一つの冷却設備の概略図を示す。地上部にはヘリウムガス圧縮機、ヘリウムガスタンク、および液体窒素貯槽が設置され、コールド・ボックス、サブクーラー、回収ガスタンク、多重トランスファーチューブ、および超伝導磁石を収納した2台のクライオスタットは地下のビーム衝突点付近に設置された。ここで開発した冷凍設備の特徴は、完全自動化されていることである。これにより運転員の技量によらない安定な長期連続運転を可能にした。過去5年間における4設備の積算運転時間は11万2千時間、トラブルによる停止時間の積算は920 時間であり、非常に稼働率の高い(99.2%)設備であった。これら長期運転の実績およびデータは、今後の低温、超伝導機器のより広範な実用化に貴重な情報を与えるものと思われる。 |
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