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4. トリスタンと加速器科学 4.3 加速器理学に関する研究 4_3_2 加速器ビーム設計用計算機コードSADの開発 SAD ( Strategic Accelerator Design ) と呼ばれる計算プログラムは、トリスタン計画を機に KEK で独自に開発された、加速器設計用の統合コードである。図76に示した優れた特徴を持ち、その機能は現在も増殖中である。 近代の加速器のビーム設計は、計算機を使って行われる。その主な内容は、リングの各位置で必要なビームの性質を得るために、リングに沿って配置される各種の電磁石(偏向、収束の主磁石ならびに六極、歪四極、補正二極などの補正磁石)の最適パラメーターを求めることである。従来このような計算をするためには、FNAL などで開発されたコードが使われていたが、水平方向と垂直方向の結合運動が扱えないなど、多くの致命的欠陥があった。一方、トリスタンの建設が始まった頃には、CERN で非常に大がかりな計算機コード(MAD = Methodological Accelerator Design)の開発が始まっていた。そこでトリスタンでは、MAD 程の汎用性は必要としないが、トリスタンのビーム設計に必要な計算をするための、よりコンパクトで、いくつかの点では MAD をはるかに越える性能を持つコードの開発を計画し、SAD として完成させたのである。 SAD は、非線形磁場による安定軌道領域縮小効果を調べるための独自のプログラム、中心値からずれたエネルギーのビームの運動を平均化しないで取り入れ、パラメーターの最適化を行うプログラム、放射偏極効果のための最適軌道を探すプログラムなど、従来どこにもなかった計算機能を持っており、世界的に大変高い評価を得ている。その性能は、トリスタンで十分に発揮された。トリスタンが LEP などと比較して、より高いルミノシティーや大きなビーム偏極度の達成に成功した最も大きな功績は、SAD の開発にあったと言っても過言ではない。 実際 SAD はこれまでに、KEKB, FFTB, ATF, JLC, NLC などさまざまな加速器の設計、シミュレーション、性能開発にもその威力を発揮してきた。そして今では CERN の計算機にもインストールされ、広く利用されるまでになっている。 Figure 76: SADコードの特徴 |
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