PF

PF産業利用成果トピックス #2

高効率太陽電池を目指したCZTS薄膜の解析と制御

PFでの研究期間
2012年-2013年
研究機関
株式会社カネカ
主要な研究者
辻 良太郎、外山 利彦(大阪大学)
使用ビームライン/手法
BL-9A,9C / XAFS

研究の概要

高効率薄膜太陽電池材料Cu2ZnSnS4(CZTS)の変換効率向上に向けて問題となるバンドギャップ(Eg)変動ならび膜中異相形成に関し、XAFS測定を行った。その結果、副次異相は形成されず、プロセス温度に応じて構造乱れが低減して結晶性が向上することが示された。これがEg変動の要因である可能性が高い。今回の結果を踏まえたプロセスの最適化により変換効率の向上(6.9 %)を達成した。

img

PF活用のポイント

CZTSは同一組成でも原子配置の違いにより異なる結晶構造を取りうる材料であり、ZnSなどの異相が含まれる場合もある。しかしこれらの構造情報はXRD分析やラマン分光法では得ることが不可能であり、PFにてXAFS測定を行い初めて確認可能となった。また実験計画段階からデータ解析までPFメンバーの緊密なサポートを受けられたことも大きなポイントである。


産業への貢献・製品への応用・経済波及効果など

現時点で太陽電池実用化には至っていないが、今回の分析結果から導かれた結晶成長処方を製造プロセスに応用することにより、変換効率向上に寄与できると考えられる。


論文・総説

T. Toyama, T. Konishi, Y. Seo, R. Tsuji, K. Terai, Y. Nakashima, H. Okamoto, and Y. Tsutsumi, Appl. Phys. Express 2013, 6, 075503, "Grain growth in Cu2ZnSnS4 thin film using Sn vapor transport for photovoltaic application"


研究者からの一言

放射光を利用する実験を初めて行いましたが、懇切丁寧に御指導いただいたおかげで貴重なデータを得ることが出来ました。また討論会やシンポジウムでも発表の機会を与えていただき感謝しております。