高効率薄膜太陽電池材料Cu2ZnSnS4(CZTS)の変換効率向上に向けて問題となるバンドギャップ(Eg)変動ならび膜中異相形成に関し、XAFS測定を行った。その結果、副次異相は形成されず、プロセス温度に応じて構造乱れが低減して結晶性が向上することが示された。これがEg変動の要因である可能性が高い。今回の結果を踏まえたプロセスの最適化により変換効率の向上(6.9 %)を達成した。
CZTSは同一組成でも原子配置の違いにより異なる結晶構造を取りうる材料であり、ZnSなどの異相が含まれる場合もある。しかしこれらの構造情報はXRD分析やラマン分光法では得ることが不可能であり、PFにてXAFS測定を行い初めて確認可能となった。また実験計画段階からデータ解析までPFメンバーの緊密なサポートを受けられたことも大きなポイントである。
現時点で太陽電池実用化には至っていないが、今回の分析結果から導かれた結晶成長処方を製造プロセスに応用することにより、変換効率向上に寄与できると考えられる。
T. Toyama, T. Konishi, Y. Seo, R. Tsuji, K. Terai, Y. Nakashima, H. Okamoto, and Y. Tsutsumi, Appl. Phys. Express 2013, 6, 075503, "Grain growth in Cu2ZnSnS4 thin film using Sn vapor transport for photovoltaic application"
放射光を利用する実験を初めて行いましたが、懇切丁寧に御指導いただいたおかげで貴重なデータを得ることが出来ました。また討論会やシンポジウムでも発表の機会を与えていただき感謝しております。