放射光を利用した位相差X線CTでは、低温セルを用いることで氷とクラスレートハイドレートとの分布を可視化する技術が確立している。
本技術を天然ガスハイドレート(以降、NGH)に適用し、「自己保存効果」の発現に関与している氷膜の分布状態を調べた結果、NGHは数百ミクロンの薄い氷膜で覆われていることが明らかになった。
従来の吸収型のX線CTではガスハイドレートと氷の明確な識別ができなかったが、分離型の位相差X線CTを利用することで密度の近い物質であるガスハイドレートと氷でも造影剤無しに識別が可能となり、実物大に近いオーダーでNGHと氷の三次元分布画像の取得に成功した。
工業的に製造した複数のNGHを一定条件で測定し、氷膜の存在とともにその内部にはNGHが緻密に詰まっていることが確認された。これらの結果はNGHペレットの品質を担保し、製造プロセスの妥当性を裏付けるものである。
放射光について全くの初心者でしたが、「フォトンファクトリーの産業利用促進」課題の中でPF職員の方々にサポートいただき、各種手続きや実験を問題なく進められました。その後、共同研究に発展し、研究の幅が広がる良い経験となっています。