CVD成長単結晶ダイヤモンドの結晶性を総合的に評価するため、ラウエ配置(透過型)トポグラフィーで微小部分の観察を行った。ピクセル毎ロッキングカーブ(PRC)の評価により局所的なダイヤモンド結晶の完全性・欠陥の分布状態・巨視的な歪みや湾曲に関する情報が50 m以下の分解能で2次元分布図として得られ、ダイヤモンド結晶の改善への指針が取得できた。
実験室線源で測定したロッキングカーブでは結晶全体の平均的情報しか得られなかったが、放射光を用いた高分解能X線トポグラフィーによって試料の局所的な結晶性に関する情報を得ることができた。微妙な歪や形状変化を単なる観察ではなく数値データとして認識できたのは初めてである。
作製条件や処理方法が結晶性に及ぼす影響が一部明らかになり、今後の高品質化への指標となった。ダイヤモンド単結晶はパワーデバイス材料、次世代放射光施設でのX線光学素子等への応用など広い用途があるが、これに適合する結晶の開発を見据えた品質改善に有益である。
結晶性分布図を見ると、欠陥が発生するメカニズムの一端が理解でき、この手法の有用性を改めて認識した。他の材料にも展開できる手法であり、分解能の向上も検討すべき課題である。実験前には「長いかな」と思っていた3日間×3回の実験が、実際には足りないと感じるほどだった。放射光の威力を実感できた。