CT測定により炭化・腐朽・蟻害による木材内部の断面欠損の可視化を行った。CT画像から密度分布像を作製し、0.1 g/cm3以下の密度差を定量的に把握できた。その結果、早材・晩材の密度差、炭化・腐朽に伴う密度低下などが確認でき、CT測定による内部構造変化分析の有用性を確認した。大型試料の内部構造を可視化するための測定方法も検討した。
木材試験片の観察は従来、内部状況の確認のためには木材を切断する必要があり、確認できるのは切断した断面に限られ、その断面は切断時に乱されていた。しかしPFの利用によれば、そういった心配は無く木材を切断せずに3次元画像で内部状況を確認することができ、立体的に複雑な密度分布を持つ材料の詳細な検討には非常に有用であった。
建築業界において木材は、内装材や構造材としてこれまで利用されてきた。近年の建築基準法の改正や行政による木材の積極的な利用促進によって、中・大規模木造建築が増加してきている。中・大規模木造建築においては、高い防火性や耐久性が要求され、これまでにない課題も現れてきている。
本検討結果の木材内部構造の可視化は、不均一材料である木材のより高度な技術構築の一助になると期待される。
研究開発を進める上で内部構造可視化技術は、仮説から実証に至る工学的な検討を精度良く実施することが可能となるため、木材と鉄の複合材料や様々な大きさの試料を含め、内部構造を可視化を可能とする技術を今後期待しています。