放射光XAFSを利用して、高温中の鉄鋼原料の化学反応(還元反応)をその場観察した。その結果、反応に使用するガスの種類により、酸化鉄から金属鉄ができるまでの反応の仕方が異なることが、結晶構造と化学状態の両方の視点から初めて明らかになった。また得られたスペクトルの解析により、試料の還元率の時間変化も割り出すことができた。
鉄鋼原料反応のその場観察は、重量変化や反応生成ガスの分析によって行われることが多く、結晶構造や化学状態(価数)などミクロの視点からはなされていなかった。放射光という強力なX線を使うことで、化学反応の速さと同等の時間間隔で、原料の状態変化をその場観察することができた。
今回得られた結果を元に実験条件を最適化し、多くの実験を積み重ねることで、将来的に製鉄プロセスの最適化につながる一つの指針が得られることが期待される。
その場観察実験は、高温で可燃性ガスを使用するため、安全上の様々な配慮が必要な実験だったのですが、ビームラインに常設され適切な管理がなされている実験システムを使用させていただいたため、安全に実験を行うことができました。また、担当者にはほぼつきっきりで指導していただいたため、安心感を持って実験を進めることができました。結果の解釈や実験の進め方など、不明点はその場でXAFSのプロを交えて議論できた事もとても心強かったです。