PF

PF研究会「放射光顕微分光が切り拓く材料研究のフロンティア」
Frontier of Materials Research by Synchrotron Radiation Microspectroscopy

 
2024年8月21日掲載

<趣旨>

 2000年代以降,材料物性研究は材料をあるがままの状態で評価する方法に大きくシフトしてきた。in situ 測定やoperando 測定はその一例であるが,複雑な組成や形態を持つ材料をそのまま評価する顕微測定もこのシフトに一役買っている。いくつかある顕微法のうち,PFの軟X線ビームラインで行われている分光実験では集光ビームを用いる走査型顕微法が主流である。BL-28Aでは走査型光電子分光,BL-13Bでは走査型光電子分光とX線吸収分光,BL-19Aでは走査型透過X線顕微鏡により,トポロジカル絶縁体,磁性体,触媒,有機半導体,天体材料など多岐に渡る材料の研究が進められている。本研究会では,これらのビームラインでの成果発表を通じて,PFにおける顕微分光測定の現状と課題を共有し,施設側はユーザーから出された課題や要望を今後の高度化につなげることを,ユーザーは複数ビームラインを利用してより広範なデータに基づいた材料研究の計画立案に役立てることを目指す。


<概要>

日時:2024年10月3日(木)13:30~10月4日(金)12:20

会場:オンサイト(KEKつくばキャンパス4号館セミナーホール),オンライン(ZOOM)のハイブリッド開催

提案者:𠮷信淳(東京大学),佐藤宇史(東北大学),小澤健一(PF),山下翔平(PF)

世話人:小澤健一(PF),山下翔平(PF)

参加費:無料

懇親会:10月3日(木)18:00~20:00 会場:研究本館小林ホール 会費:2,500円(一般)/1,000円(学生)

旅費のサポート:参加者の皆様にもなるべく旅費をサポートさせていただきますが、予算の都合により希望に添えない場合もあります。予めご了承下さい。締切後に旅費の有無についてご連絡させていただきます。
        ※研究所、大学に勤務されている方及び大学院生には旅費のサポートが可能です(但し、つくば在住の方は除く)。
          (企業にお勤めの方、学部学生には旅費、宿泊費は支給されません。)
        ※自宅、 実家、知人宅にお泊りの場合は、宿泊費は支給されません。
        ※KEK外に宿泊される場合は、宿泊費はKEKドミトリーに宿泊された場合と同等額までのサポートとなります。

KEKドミトリー:他のイベントもあり、バス付きの部屋数は限られております。
        希望に添えない場合もありますので、予めご了承下さい。
          ●シングルバストイレ付き(5号棟)(SB5)  3,100円/泊
          ●シングルバストイレ付き(3/4号棟)(SB) 2,600円/泊
          ●シングルバストイレ無し(S)  2,100円/泊
        ※ドミトリーを利用される場合は共同利用者支援システムにユーザー登録、用務登録が必要となります。
         登録方法は締切後にご連絡します。

お問い合わせ:研究会事務局(pf-kenkyukai[at]pfiqst.kek.jp ※[at]は@に変換)

                            

重要な締切:
  ●旅費・ドミトリー申し込み:   2024年9月17日(火)⇒締切ました。
  ●懇親会申し込み:        2024年9月24日(火)
   ●参加申込:           2024年9月27日(金)
    ※現地参加の方は、この後は当日会場にて受け付けます。
     オンライン参加の方は引き続き当日まで受け付けます。   

<プログラム>

プログラム冊子(3.7MB)のダウンロードはこちらから。                               
10月3日(木)
13:30~14:00はじめに&趣旨説明
𠮷信 淳(東京大学)、小澤 健一(KEK)
14:00~14:30講演1「PF BL-19A/Bにおける顕微分光分析のための装置開発」
山下 翔平 (KEK)

フォトンファクトリーBL-19A/Bのビームラインは、走査型透過X線顕微鏡(STXM)や 軟X線吸収分光(XAS)を用いた
高度なin-situ測定システムを整備し、複数の分析手法によるバルク・表面の同時分析を実現している。本発表では、これら
の最新システムや成果、新たに導入したマルチ分析手法を紹介する。
14:30~15:00講演2「走査型透過X線顕微鏡 (STXM) を用いた地球外物質の有機物分析」
癸生川 陽子 (東京工業大学)

隕石試料の走査型透過X線顕微鏡(STXM)を用いた炭素X線吸収端近傍構造(C-XANES)分析データの解析手法の検討を
行い,様々な種類の隕石の比較から,これらの隕石に含まれる有機物の特性と母天体過程との関連を紹介する。
15:00~15:30講演3「STXMを用いた海水中粒子の鉄・炭素化学種分析とその輸送過程の解明」
栗栖 美菜子 (東京大学)

走査型透過X線顕微鏡を用いて、海洋中の懸濁粒子のFeとCの化学状態・共存状態の分析を行った。沿岸堆積物から
鉄が溶出する海域付近では、鉄が有機物粒子と共存している様子が見られ、有機物との相互作用が鉄の長距離輸送の
要因の一つとなっている一方、その効果は限られた範囲にとどまることが示唆された。
15:30~15:40 休憩
15:40~16:10 講演4「放射光顕微ARPESによるTeの一次元エッジ状態観測」
中山 耕輔 (東北大学)

Teのトポロジカルな性質の解明を目指して、Photon Factory BL-28AにおいてマイクロARPES測定を行い、
(0001)面のエッジに局在した一次元電子状態を観測した。第一原理計算との比較から、このエッジ状態は
Teらせん鎖の一次元トポロジカル絶縁体的な性質に由来することを見出した。
16:10~16:40 講演5「ファンデルワールス積層体における電子構造の直接観測」
坂野 昌人 (東京大学)

単層グラフェンに代表されるようなテープを用いた機械的剥離によって得られる微小(~0.01 mm)二次元結晶を
積層したファンデルワールス積層体は、積層する際のひねり角度や原子層の種類といった多岐にわたる自由度が存在
しており、未開拓物性の宝庫として盛んに研究が行われている。本発表ではBL28-Aにおける顕微角度分解光電子分光
によって、二次元結晶やファンデルワールス積層体の電子構造を直接観測した研究成果を紹介する。
16:40~17:10講演6 「レーザーカットによって表面調製されたMoS2エッジ面の化学状態と反応」
尾崎 文彦 (東京大学)

層状物質であるMoS2をレーザー切断加工することで平坦なエッジ表面を作製し、エッジ面に存在する
特異な電子状態・化学状態を顕微光電子分光によって直接観測することに成功した。また、気体曝露を行うことで
エッジ面に反応の活性点が存在することを実証した。
17:10~17:40講演7「有機分子結晶試料における光電子分光実験の実情」
中山 泰生 (東京理科大学)

有機半導体分子の単結晶試料を対象として,その電子バンドの分散構造を角度分解光電子分光法によって
実測した研究例を示すとともに,こうした材料に対して光電子分光法を適用する際の問題点とノウハウ,
さらに顕微光電子分光を適用する意義についても概説する。
18:00~20:00 懇親会
10月4日(金)
9:00~9:30講演8 「放射光X線を用いたリュウグウ母天体の水環境の復元」
高橋 嘉夫 (東京大学)

リュウグウ試料の放射光分析により、母天体で生じた水質変成時の水環境(Eh、pHなど)の復元を行った結果を
紹介する。この分析では、軟X線領域の走査型透過X線顕微鏡(STXM)、硬X線領域のμ-XRF-XAFSなどの
顕微分析と、全体を把握するためのバルクXAFS分析の併用が重要である。
9:30~10:00講演9「トライボロジー現象の理解に向けた軟X線XAFS応用」
平山 朋子 (京都大学)

トライボロジーとは、摩擦 ・摩耗 ・潤滑現象をベースとした機械工学の一分野であり、近年の省
エ ネルギー化に向けた取り組みにおいてより存在感を増しつつある。本研究では、その低摩擦現象の
キーとなる炭素系トライボフィルムに着目し、軟X線XAFS分析を行った結果について紹介する。
10:00~10:30講演10「顕微光電子分光を用いたTiO2(110)表面に吸着したスターバースト型色素の吸着構造の解析」
前島 尚行 (分子研)

ルチル型TiO2(110)上にスターバースト型有機色素SB8を吸着させたときの吸着構造を
顕微光電子分光測定により調べた。その結果、基板上では場所毎に吸着量は異なるものの、吸着構造は
吸着量に依存せず、色素分子中の複数の官能基が吸着構造を形成することが確認された。
10:30~10:40 休憩
10:40~11:10講演11「カーボンナノチューブ複合紙の二次元光電子分光マッピングと特性評価」
大野 真也 (横浜国立大学)

カーボンナノチューブ(CNT)複合紙は,紙に導電性を付与することが可能で,色素増感太陽電池等の半導体素子への
応用が期待されている。安価,軽量で湾曲可能なフレキシブル材料としても期待が大きい。本研究では,光電子分光
での研究が希少な紙材料の特性評価の事例を紹介する。
11:10~11:40講演12「顕微測定を活かしたARPESによる籠状物質の電子状態観測」
大槻 太毅 (京都大学)

非調和フォノンモードの存在が指摘されている籠状物質BaIr2Ge7に対して顕微光電子分光を行い、
異なる劈開面に由来したドメイン構造を観測した。籠状構造由来の終端面における詳細な光電子スペクトルの
温度変化を調べることで非調和フォノンモードを抽出することに成功した。
11:40~12:10講演13「顕微ARPESによる銅酸化物の超伝導ギャップ不均一性の可視化」
岩澤 英明 (量研機構)

高エネルギー分解能の顕微角度分解光電子分光を用いて、銅酸化物高温超伝導体における電子状態の
空間不均一性を観測した研究成果を報告する。顕微角度分解光電子分光の「波数分解」と「顕微」の
両特性により、走査型トンネル顕微鏡・分光とは異なる情報が得られることを紹介する。
12:10~閉会の辞
佐藤 宇史 (東北大学)

<講演者の皆様へ>

【発表時間について】

発表+議論30分を予定しています。

【要旨について】

要旨提出期限:2024年9月11日(水)までにpf-kenkyukai@pfiqst.kek.jpまでお送り下さい。
順次当ホームページに掲載させていただきます。

【Proceedingsについて】

PF研究会では研究会終了後、Proceedingsの発行が義務付けられています。
ご提出頂いた資料をKEKプレプリント・レポートデータベースに 登録させていただき、
ウェブに掲載されますので、どうぞその点ご承知おき下さい。


更新日 2024-10-4