施設長あいさつ
放射光実験施設長としての二期目がスタートしました。PFの組織化に1年を要したため、一期目は2年間の任期でしたが、今期は3年間となります。PFの使命である「世界の放射光科学を先導する新技術と若手人材の供給、および、物質と生命に関わる多様な利用研究の推進」のため、引き続き、全力で取り組んで参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。
PFの使命を長期にわたって遂行していくためには、学術利用に適した、自由度を格段に向上させた新光源施設の実現が不可欠です。一期目がスタートした際、PFの施設運営にあたって「連携」を重視する考えを述べました。これまで、具体的にどのような連携を進めてきたかについては、放射光実験施設長が担当するPFニュース5月号と11月号の『施設だより』で紹介していますが、放射光コミュニティにおける連携が中心であったと総括することができます。文科省の量子ビーム利用推進小委員会が2021年2月4日付で公表した『我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方(とりまとめ)』では、諸施設の良好事例が示されています。PFの関連では、放射光学術基盤ネットワーク計画、開発研究専用ビームラインの整備計画、新光源施設の候補であるHybridリングの概念設計の推進が取り上げられていますが、良好事例も計画で終わらずに実現してこそ真に意義あるものになります。開発研究専用ビームラインについては、放射光学術基盤ネットワークを形成するUVSORとHiSORに技術面での検討に加わってもらい、今年度、整備に着手することにしました。
一方、予算規模の大きい新光源施設の実現には、放射光コミュニティにとどまらない、様々な連携が求められます。特に、高エネルギー加速器研究機構における各組織が連携して、実現に向けた取り組みを進めることは必須です。この点に関して、最近、とても嬉しいニュースが入ってきましたので紹介したいと思います。4月30日に開催された機構の役員所長懇談会で、「フォトンファクトリー計画推進委員会(仮称)」の設置準備を進めることが決まったというものです。まもなく公表される見通しのKEKロードマップ2021に記載されている新光源施設の計画を推進するためのKEKとしての体制に相当します。委員会規程の詳細な検討はこれからですが、理事、所長・施設長、管理局部長、研究主幹・センター長、機構外の研究者などで構成され、機構長の求めに応じて活動すると規定されることになります。これまで、PFの将来計画等を検討する委員会は、物質構造科学研究所(もしくは同研究所運営会議のもと)に設置されてきましたが、本推進委員会は、SuperKEKBのBファクトリー計画推進委員会やILCのリニアコライダー計画推進委員会と同様に機構に設置され、PFの現行計画と将来計画を機構内外に見える形で強力に推進するものと期待されます。
新光源施設(長期計画)の実現に向けた環境作りは、着実に進んでいると自己評価していますが、各所で説明しているように、諸事情を勘案するとPFの稼働から50年となる2030年代前半までに建設することが目標になると考えています。それまでの間は、老朽化した機器を更新して現行施設の性能向上を図ることになります。光源については、長期の運転停止の予防の観点から更新の優先順位を決め、性能向上に加え、新光源施設での活用も考慮して導入する機器の仕様を策定しています。これらの更新は、PF Upgrade 2020(短期計画)として紹介してきたもので、昨年度より、機構長の裁量予算と実験施設のプロジェクト予算によって進めています。ビームラインについても、遠隔・自動測定機能の強化や前述の開発研究専用ビームラインの整備、そして特長あるビームライン群への再整備を進めていきます。
皆さんとPFの関わりは様々だと思いますが、PFを大事と思う気持ちは一致しているものと確信しています。8月28日には、PF同窓会の主催による「フォトンファクトリーの礎を築いた先生方を記念する講演会」が企画されていると聞いています。現役の放射光実験施設長としては、建設当初の情熱に想いをはせ、PFの将来、放射光科学の将来、自然科学の将来に向けて、PF関係者の連携を深める機会となることを楽しみにしています。
最後になりますが、皆さんからお預かりしている大事なPFの運営を、放射光実験施設長としての2年間とその前の1年間、経験不足の私でも何とか務めることができたのは、機構内外の極めて多くの皆さんのご尽力の賜物と感謝しています。PFニュースでも紹介されていますが、放射光共同利用実験審査委員会(PF-PAC)とPFユーザーアソシエーション(PF-UA)は、機構・研究所・実験施設と同じタイミングで委員と会長・幹事・運営委員が交代になりました。それぞれ、新任の方、留任の方、退任の方とおられますが、改めて、心よりの感謝と引き続きのご協力をお願い申し上げる次第です。
(PFニュース Vol.39 No.1より、一部改変 )
2021年5月
放射光実験施設長
船守展正