施設長あいさつ(アーカイブ)
放射光実験施設フォトンファクトリー(PF)が2019年4月1日付で正式な組織として発足し、実験施設長に就任いたしました。1978年の設立当初の名称である放射光実験施設は1997年の高エネルギー物理学研究所の機構化の際に消滅しましたが、この春、22年を経て復活しました。1980年代が放射光の黎明期であるとするならば、皆さんとともに2020年代を放射光の第二黎明期にしていかなければなりません。「放射光科学の発展とPFの将来計画の実現」に向けて全力で取り組んで参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。
PFの施設運営にあたっては、「連携」を重視したいと考えています。放射光実験施設、放射光科学第一・第二研究系、加速器第六研究系の4組織がコヒーレントに活動することはもちろん、加速器研究施設、共通基盤研究施設、管理局(機構事務本部)との機構内連携が大切です。昨年度は、日常的な支援に加え、物構研の組織改編やPF先端化寄附金の設置、PF-UAの会員情報管理などの特別な支援を管理局から受けました。今年度は、機構理事を座長とする利用手続きの一元化のためのワーキンググループが設置され、ユーザーの皆さんの利便性向上のための検討が始まっています。さらに、施設運営において避けて通れない予算面では、管理局や機構執行部の理解もあり、PFプロジェクト経費の赤字を機構の予算から補填してもらうことで最低限の運転時間を確保しています。
放射光コミュニティとの連携も大切です。放射光学会では、2019年3月に第1回拡大放射光施設代表者会議が開催され、日本学術会議のマスタープラン2020に大型研究計画「放射光学術基盤ネットワーク」を提出することになりました。PF、UVSOR、HiSORの学術3施設の連携と高度化を中心とした計画です。文科省の量子ビーム利用推進小委員会も第10期となり、日本全体の量子ビーム施設の役割分担が議論されると聞いています。PFには、大学共同利用機関である物構研の中核施設として科学研究と人材育成の拠点となること、また、世界有数の加速器の専門家組織を有するKEKに所属する強みを活かした開発研究の拠点になることが期待されているものと考えています。
直近の将来計画として、PFリング高度化計画(PF Upgrade 2020: Renovated Multipurpose SR-Ring with Only One and Number One Beamlines)の具体的な検討をPFの4組織の緊密な連携により進めています。量子科学技術研究開発機構と光科学イノベーションセンターによる次世代3GeV光源計画が進められている現状を踏まえ、新施設の計画は10年先を見据えて準備を行うこととし、KEK放射光計画で検討した技術要素をPFリングとビームラインの高度化のために活用するものです。PFリング高度化計画では、第三世代の低エミッタンスを実現しながら、高強度パルスX線や垂直偏光X線などの特長を合わせもつ独自の第三世代リングに進化させることを目指しています。また、安定性を飛躍的に向上させることで、高度な測定を容易に実施できるようにすることを目指します。本計画の実現は、物構研が準備を進めている新センター(量子ビーム連携研究センター)構想の成功の鍵となるとともに、前述の「放射光学術基盤ネットワーク」においても、初年度からの3年間で実施するものとされており、2020年度概算要求に盛り込む方向で考えています。
予算状況を好転させるためには、研究教育上の優れた成果を創出してPFの存在意義を高めることが必須です。鶏と卵の関係ではありますが、限られた予算であっても優れた成果をより多く創出するための仕掛けを工夫したいと考えています。スタッフ数の不足が深刻な現状をみれば、ユーザー(およびポテンシャルユーザー)の皆さんとの連携を強化することが極めて重要なことは明白です。これまでも実験ステーションのユーザーグループ運営などを通して多大なるご協力を頂いているところですが、異なる方向の連携として、ユーザーとスタッフの高度な共同研究を促進するための新制度の導入とそれを機能させるためのビームラインの再編が必要と考えています。ビームラインの再編については人材育成など、他の観点からも検討します。多様性は重要ですので、それを損なうような再編は避けるべきと考えています。
最後に、皆さんにお願いです。是非とも、この愛すべきPFの将来のために「連携」して行きましょう!
(PFニュース Vol.37 No.2より、一部改変 )
2019年5月
放射光実験施設長
船守展正