実験責任者 | 所属 | ステーション | 期 間 |
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佐藤 宇史 | 東北大学 | 28A/B | 2021/4〜2024/3 |
トポロジカル絶縁体の発見を契機にして、新しい種類のトポロジカル物質の探索と、それを用いた量子現象の実現やデバイス応用に向けた研究が世界中で急ピッチに行われている。トポロジカル絶縁体は非磁性(時間反転対称性を有する)絶縁体における波動関数のトポロジーを数学的に見出すことで提案された物質であったが、近年では結晶のもつ様々な対称性によって多種多様なトポロジカル物質が存在することが予測されており、新型トポロジカル物質の探索が量子物質研究における新たな潮流を生み出している。物質のトポロジーを直接反映するのは表面のギャップレス状態であり、これをARPESによって観測することで、初めてトポロジカル物質が確立しその量子物性の物理的起源の解明が可能となる。しかしながら、これまでARPESによるトポロジカル物質研究は観測が比較的容易な3次元トポロジカル物質の結晶表面を対象に行われており、エッジ状態、ヒンジ状態、側面ディラック電子状態といったような、新たなトポロジカル相の実証の鍵となる局所性の高い空間領域での電子構造の研究はほとんど進んでいない状況にある。 本研究では、BL-28における偏光可変高輝度光を利用したマイクロ集光高分解能ARPESエンドステーションの整備・改良を行って、空間分割した電子状態の直接決定を可能にすることで、原子層トポロジカル絶縁体、高次トポロジカル絶縁体、トポロジカル半金属など、対称性に起因した特異な局所電子状態の発現が期待される新奇なトポロジカル物質を実証し、低エネルギー励起状態と特異物性発現機構との関連を明らかにすることを目的とする。現在のBL28の光学系の終端にKBミラーを敷設し、その立ち上げと調整、ARPES装置の改良を行うことでマイクロ集光高分解能ARPESエンドステーションを建設する。先端装置による研究を強力に推進することにより、トポロジカル物質の実証と特異物性発現機構の解明が進展し、新しいトポロジカル物質相・量子現象の開拓や、トポロジカルな物質現象を応用したデバイスの開発が大きく進展すると期待される。 |
関連課題 |