実験責任者 | 所属 | ステーション | 期 間 |
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組頭 広志 | 東北大学 | 2A/B, 28A/B | 2021/10〜2024/9 |
モット絶縁体の示す金属・絶縁体転移(モット転移)を動作原理としたモットトランジスタは、Beyond CMOSの有力候補の一つである。しかしながら、従来の電界効果トランジスタ構造(FET)を用いたデバイスによるモット転移の制御は、原理的な難しさから未だ実現されていない。そのため、モットFETの実現のためには、新しい原理が必要とされている。 本研究の目的は、強相関酸化物二重量子井戸間の共鳴トンネル現象を利用した新しい原理のモットトランジスタを創成することにある。具体的には、モット転移量子井戸層/ バリア層/ 金属量子井戸層からなる酸化物二重量子井戸構造を設計し、印加電圧に依存した量子準位間の共鳴トンネルを利用してモット転移層における金属・絶縁体転移(On/Off動作)を制御するという新たな動作原理を提案し、その実現を目指す。そのために、マイクロ集光した放射光を用いてデバイス動作時の量子化状態を可視化するオペラントμ角度分解光電子分光(μARPES)装置を開発し、原理検証とその知見に基づいた構造設計を行う。 本研究を発展させる鍵は、デバイス動作時に酸化物量子井戸内に誘起される量子化状態の直接観測と、その知見に基づいた精密な構造設計による強相関波動関数の制御である。サブバンド構造を直接観測可能なARPESを用いることで、金属・絶縁体転移(電子の遍歴・局在状態)のみならず、量子井戸内の波動関数と一対一に対応する量子化準位を直接観測することができる。そのため本研究では、これまで建設・改良を進めてきた「in-situ ARPES +レーザーMBE複合装置」に新たにマイクロ集光光学系と電圧印加システムを組み込むことで、デバイス動作時の量子状態変化を正確に可視化する。このオペラントμARPES化により、新デバイスの原理検証と共に、素子構造の最適化を行う。この「先端計測に立脚した素子設計」という切り口によりモットFETの実現を目指す。さらには、原理検証にとどまらず、本S2課題メンバー内の薄膜作製グループとの密接な連携を通して量子物性評価、および超構造・デバイスの製作へと展開する。これにより、酸化物のみならず機能性材料科学における「放射光解析プラットホーム」を構築・運営することで、放射光解析に基づく物質開発を推進する。 |
関連課題 |