2021S2-003 顕微軟X線分光による機能性材料の電子状態可視化と物性・反応との相関研究
実験責任者 | 所属 | ステーション | 期 間 |
---|---|---|---|
小澤 健一 | KEK-IMSS-PF | 13B, 3B | 2021/10〜2024/9 |
ミリからセンチメートルオーダーの金属や半導体の単結晶を用い,良く規定された表面で起こる様々な現象を評価する研究分野は「表面科学」として発展してきた。表面科学が大きく貢献したのは固体触媒の機能解明であり,分子吸着,反応素過程,生成物を表面科学の手法で逐一明らかにすることで達成された。一方,単結晶を使ったモデル材料と実材料の間にある「マテリアルギャップ」が大きな問題として提起された。このギャップは触媒にとどまらず多くの材料でも指摘され,これらの差を埋める研究が現在では盛んである。その一つが,顕微測定研究である。世界の3GeVクラスの放射光施設では,マイクロあるいはナノメートルサイズの集光光で顕微測定ができるビームラインが多く稼働するようになり,上記の問題解決に一役買っている。このような研究動向にキャッチアップし,かつ最先端の成果を出し続けるために,BL-13Bで顕微X線分光システムの構築を2018S2-005課題の下で進めた。 本申請では,前課題を引き継ぐ形で①顕微測定システムを一般ユーザーが高度なレベルで使える状態に仕上げると同時に,②その性能を十分に生かした研究をBL-13Bのヘビーユーザーが展開し,③インパクトの強い研究成果をBL-13Bの活用事例として提示して新規の利用者を呼び込む起爆剤にする。先行課題では測定システムの高度化に軸足があったが,本課題では顕微測定研究へと重心を移す。具体的には,金属触媒,酸化物(光)触媒,有機太陽電池材料,有機半導体材料といった機能性材料表面のステップや結晶エッジ,結晶ドメイン境界,ヘテロ接合界面,原子・分子の不均一吸着といった構造的に不連続な局所領域における化学活性や電子状態を検証し,マクロスコピックな物性への影響を検証することで,機能発現機構を明らかにする。また,触媒表面における原子分子の拡散現象を捉えたり,サブミリメートルサイズの有機微結晶を用いた精密バンド構造解析も実施する。 放射光を利用した顕微分光研究では,BL-28Aでも進められているマイクロARPESのように,試料表面の状態の良い場所で理想的な電子構造を決定するといった物理分野の物性研究が世界的に見ると多い。これに対して本課題では,触媒,光触媒,有機分子と言った化学に傾注した研究が多く,化学分野での顕微分光研究の先鞭をつけることを狙っている。 |
関連課題 |
成果
- 論文等(KEK放射光共同利用実験研究成果データベースの画面が別タブで開きます)
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