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2026S2-002 先端軟X線分光によるアストロバイオロジー研究の新展開

実験責任者 所属 ステーション 期  間
高橋 嘉夫 東京大学 12A, 19A/B, 9A 2026/04〜2029/03
 リュウグウやベンヌなどの C 型小惑星帰還試料は、外側太陽系で形成後に、「太陽系で最初の液体の水」が鉱物や有機物と反応(水質変成)して生成した様々な生体関連物質や水を地球などへ供給したと考えられ、宇宙地球化学やアストロバイオロジーにおいて最重要な研究対象である。一方、元素の化学種は、水質変成での様々な化学素過程を鋭敏に反映するが、地球環境での変質を最も受けやすい情報である。そのため、宇宙空間で起きた反応をそのまま保存したこれら帰還試料に対して、我々が得意とする先端 X 線吸収微細構造(XAFS)法や走査型透過 X 線顕微鏡(STXM)法を用いて、多数の元素の化学種を得ることで、貴重な帰還試料から世界初の知見を多数得られる。特に化学的分化を経ていない C 型小惑星などでは、第 4 周期より重い元素の濃度は非常に低く、相対的に軽元素の重要性が高い。特に生命との関連では、有機物やその反応を触媒する金属元素(主に 3d 遷移元素)までが主要な研究対象になるので、その化学種の解明においては、3d 遷移元素の L 吸収端も含めて、軟 X 線領域のX 線分光が重要な手法となる。特にここでは、STXM-XANES 法での電子収量法の利用や、超微量元素の蛍光 XAFS 分析を可能にするエネルギー分解型の検出器である超伝導トンネル接合検出器(STJ)などの応用により、新規性の高い成果を得る。特に STJ では、蛍光 X 線を高いエネルギー分解能で測定することは、妨害元素の影響を避け S/B 比を下げることで質の良い XAFS を得られるだけでなく、寿命幅を超えた分解能で XANES を取得できる可能性もある(TES を用いた Cs L3 端などで実証済)。これが可能になれば、軟 X 線分光法利用のハイライトである炭素や窒素の XANES において、より詳細なピークの検出や化学種の同定が実現できる可能性がある。STJ は、現状では蛍光 X 線の見込み角が小さい STXM への応用は困難であるが、将来の顕微分析への適用を目指して HERFD-XANES 取得を試みる。同様の手法を用いた水-鉱物-有機物-微生物の相互作用の解明は、地球の初期生命、微生物、バイオミネラルなどのような生物関連の研究にも有効であり、関連分野に属する新規の研究者の参入を得て、PF における軟 X 線分光による新しい宇宙地球化学を開拓する。
関連課題

成果

  • 論文等(KEK放射光共同利用実験研究成果データベースの画面が別タブで開きます)
  • PF Activity Report

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