2014A期実験は、1週間遅れの4月21日より開始され、休みなく順調に進行している。2014期は、7月から10月までの中断を挟んで、12月初旬までと予定されている。
平成26年12月から平成27年3月(予定)を利用期間とする2014B期の実験課題公募が、平成26年5月17日から6月9日までを受付期間として行なわれる。
HRCでは、試料から検出器までを含む半径4mの扇形で容積約50m3の領域を、真空散乱槽としている。通常は10-3Pa程度の真空度が実現しているが、3月19日頃から、到達真空度が10Pa程度に悪化し、調査のため、3月27日に実験を休止した。HRCの真空散乱槽には、大面積アルミ窓が設けられているため、安全上、真空排気中は大面積アルミ窓に接近しないルールで運用されている。このルールのため、真空散乱槽に接近してリーク箇所を調べることができないので、大面積アルミ窓を閉止板で置き換えた。その結果、リークは、大面積アルミ窓の損傷によるものではなく、今年1月に取り付けた新しい検出器のうち2本について、真空槽に固定する部分の個々の検出器のフランジが緩んだことが原因であることが判明した。これらのフランジを増締めすることにより、真空度が回復した。当面、大面積アルミ窓は閉止板で置き換えた状態で使用することとし、この部分に取り付けてあった検出器は使用しないこととした。最近の検出器の利用状況では、これらの検出器はほとんど使われない状態であったので、当面は問題ないが、今後の需要を考慮して復旧を検討する。以上の復旧作業の後、MLFが実験を再開した4月21日に、HRCも実験を再開した。その後、順調に実験がすすめられ、実験再開後5月10日までの間に、4件の実験(うち1件は一般課題)を実施した。
工事進捗状況
4月22日に施設検査を受け、無事に試験に合格した。その後、イメージングプレート・金箔照射放・3He検出器を用いて、ガイド管出口における中性子の特性解析を行っているが、設計値に近い強度が出ている模様である。
図1. 施設検査において中性子シャッターのボタンを押す関係者。
図2. イメージングプレートによるMIEZE(左図)NRSE(右図)ガイド管出口の中性子強度分布の観測。
1次元集光ミラー開発
BL16では試料の微小領域にのみ中性子を照射するために、京都大学、理化学研究所、北海道大学と協同して1次元の楕円集光ミラー開発を行っている。目標の集光サイズは0.1 mmで、これによって入射角0.6度で10 mm角の領域のみを照射できるようになる。このスペックを満たすためにはμmスケールでミラーの形状を制御することはもちろん、ミクロな傾斜誤差も100 μrad以下に抑える必要があり、高度な加工技術が要求される。そこで我々は楕円形状に粗加工したアルミ板にNiPめっきを施し、超精密切削装置で追加工することによって形状精度の高いミラーの母材を作成した。また、ミラーを蒸着するためには粗さがnm以下の鏡面に仕上げる必要があるため、2種類の方法で研磨して実際にミラーの製膜を行った。
図4は実際にBL16へ設置した集光ミラーのプロトタイプの写真で、幅60 mm、長さ550 mmに渡って中性子スーパーミラーが蒸着してある。このミラーを用いて集光性能を評価したところ、最小で数mmまで集光できることを確認した。これを0.1 mmまで集光できるようにするためには形状誤差、傾斜誤差の評価と改善が必要不可欠であり、現在このプロトタイプを持ち帰って形状測定を行っている。また、ミラーの反射率についても評価を行ったところ、残念ながら一般的に用いられるスーパーミラーと比較して1/5以下の反射率しか出ていないことが確認できた。これは研磨が不十分であることに起因していると考えており、こちらについても更なる評価を行っている。
図3. BL16に設置した1次元集光スーパーミラーのプロトタイプ。
試料環境
10 Kから473 Kの範囲で試料温度の制御が可能で、かつ12個の試料を自動交換可能な試料交換機の調整を行なった。5月下旬以降に運用開始予定。
論文発表