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構造科学グループ

構造科学グループの紹介

中性子の波としての性質を用いると、物質中の原子配列やその変化、および、対称性の僅かな破れを調べることができます。これらは物性や材料特性を物理的・化学的に理解するための知見につながります。われわれ構造科学グループでは、これらの知見を得るために、世界最大級のパルス中性子出力を持つJ-PARC物質・生命科学実験施設(MLF)に、世界で最も高い分解能(原子位置をどこまで精度よく識別できるかを示す指標)を持つ超高分解能中性子回折装置SuperHRPDと、充放電中の蓄電池の材料構造変化や動作環境下(オペランド)のデバイスの材料構造変化を原子レベルで解明する特殊環境中性子回折装置SPICAを開発しました。
これらの装置を用いて国内外の大学や研究所等の研究者や大学院生を支援しつつ、エネルギー関連物質や誘電体、磁性体、超伝導体、強相関物質などの研究を行っています。

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図1 新型コロナ下でのグループ打ち合わせ。

図2 過去の集合写真

図3 試料合成もします。X線も使います。

精密構造解析

原子配列を精密に解析するためには、原子間距離程度の波長を持つ中性子の散乱・干渉を用いる方法がもっとも高い精度が得られます。世界最高の分解能を持つ中性子回折装置SuperHRPDは従来の装置では捉えることができなかった僅かな構造変化を計測することができます。

図4 (左)直径6mmのSi標準粉末試料の粉末回折パターンをPeak-fittingした結果。2θ>170°かつ水平面に配置された検出器ピクセルのデータを用いることでΔd/d = 0.0365 %を実現しました。(右)ISIS-HRPDとの比較。

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図5 Δd/d = 0.0365 %でのリートベルト解析の結果。

図6 SuperHRPD の外観図。

図7 SuperHRPDの14T マグネットは、高分解能、低バックグラウンド実験に特化してデザインされ、windowは高角&低角バンク側のみで、可能な限りアジマス角を大きくしてあるう。マグネット導入に先立って、架台を全てステンレスに交換した。

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図8 SuperHRPDの14T マグネットを用いて、0.05%のピークシフトが検出された。

蓄電池研究

電子によって散乱されるX線に対し、中性子は原子核によって散乱されます。その結果、軽元素であるリチウム等の僅かな量の変化も捉えることができます。又、同位体の散乱能の違いを利用して特定部分の構造情報を取り出すことができます。NEDOの「革新型蓄電池先端科学基礎研究事業(RISING)」により、中性子回折装置SPICAを開発し、充放電反応中のリチウムや他の原子の原子配列の変化を原子レベルで解析しています。

図9 SPICAの外観図。

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図10 充電や放電に伴うリチウムイオン二次電池の電極材料の構造変化。正極・負極の材料が充電・放電に伴い構造変化している様子を時分割で測定することにより捕らえることができる。

構造解析法開発とZ-Code開発

J-PARCの中性子回折装置群を用いた構造科学のフロンティア研究を行う目的で、構造解析法の研究を推進しています。それらをソフトウェアスーツにしたZ-Codeを開発中です。

Z-Code配布ページ リンク先 https://z-code.kek.jp/zrg/ このページでは、Z-Rietveld (macOS版、Windows版)、Z-3D、Conograph (富安亮子氏開発)やマニュアル、サンプルデータ等を配布しています。

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図11 Z-Rietveld のGUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェイス)

マキシマムエントロピー法をTOF回折データに適用したTOF/MEMを開発しました(Z-MEM)。さらに、Z-MEMを10倍高速化し、リートベルト解析と一体化させたZ-Rietveldを配付しています(Mac版、Windows版)。結果を表示するソフトウェアZ-3D等も開発しました。図12に、Z-RietveldのMEM解析ウィンドウを示すが、タブ(画面上部で横一列のボタン)を切り替えることで、リートベルト解析からMEM解析に簡単に切り替わり、MEM解析が終了するとZ-3Dで表示される、連続的で快適な解析環境が実現しました。実行ボタンを押せばMEM解析が開始します。

Z-Rietveldを用いた磁気構造解析ツールの導入を進めている。すでに、collinearな磁気構造解析はもちろん、non-collinearな磁気構造に対してもプロパゲーションベクトルを用いた解析ができるようになった。
一方、グラフ理論による指数付けソフトウェアConographを発展させた。
(2017.04.20プレスリリース: https://www.kek.jp/ja/NewsRoom/Release/press20170420.pdf

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図11 Z-Rietveld 1.1.0.の画面(MEM解析画面)とMEM解析結果の一例をZ-3Dで表示(Rb4Cu16I7.2Cl12.8)。室温での導電率は0.34 S/cmであり、Cu原子分布が3次元的に繋がっている様子が観察できる。

Z-Rietveldは強力なポーリー解析を導入し、同じ最小二乗法を用いているリートベルト解析とポーリー解析を連続的に繋げることに成功した。たとえば、主相はリートベルト解析、副相は強度をパラメータにポーリー解析、いつかの回折ピークは個別にフィッティングということがボタン一つで選べる。図13にアミノ酸の一種glycyl-glycine をポーリー解析を実施した例である。

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図13 Z-Rietveld を用いたポーリー法による解析。(glycyl-glycine、a = 9.7826 Å, b = 9.7563 Å, c = 9.7826 Å, β = 104.3023°, 1141本のブラッグ反射強度が抽出された)。

メンバー

齊藤 高志 特別准教授(SPICA装置責任者、SuperHRPD副装置責任者)
鳥居 周輝 技術副主幹(SuperHRPD装置責任者、SPICA副装置責任者)
神山 崇 名誉教授、研究員(SuperHRPD、SPICA)
萩原 雅人 協力研究員(SuperHRPD)
塩家 正広 エンジニア(業務委託、BBT)
南波 薫 研究員(派遣、WDB)
Nur Ika Puji Ayu 総研大生
Seungyub Song 総研大生

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