東京理科大学井手本康教授が日本セラミックス協会賞・学術賞を受賞されました(業績は量子ビーム、熱力学測定を駆使した高機能性酸化物の特性発現機構の解明)。井手本氏は米国アルゴンヌ国立研IPNSで中性子回折をはじめられて以降、長い間KENSの利用者であり、現在はJ-PARCの利用者として研究を展開されています。
2014B一般課題公募が6月9日に締め切られ、2014Aを上回る申請があった
HRCでは、順調に共同利用実験がすすめられている。4月以降、二次元ニッケル酸化物Nd2-xSrxNiO4の磁気励起、カゴメ・三角格子系YbBaCo4O7の磁気励起、SmスクッテルダイトSmFe4P12のJ多重項励起、金属反強磁性体Crの高エネルギー磁気励起、強磁性近藤格子系CePd2P2の磁気励起、正四面体構造をもつ量子反強磁性体Ba3Yb2Zn5O11の磁気励起、重水素置換メタノールの中性子ブリルアン散乱、金属反強磁性体FeMnのスピン波分散関係、永久磁石Y2Fe14Bの中性子ブリルアン散乱に関する実験を実施した。
真空槽とユーティリティー、アナライザーミラーの大型案件2件(共に東北大案件)の契約が決まった。
Workshop on Inelastic Neutron Scattering 2014でPOLANOに関する招待講演をおこなった。
成果報告
BL16を用いた研究成果として以下の論文が出版された。
SuperHRPDグループでは、酸化コバルト(CoO)の20Kから330Kにわたる温度変化測定を行なった。この解析結果から、反強磁性転移の前後において単位格子体積の温度変化に特異な変動を観測した。これらの詳しい関係性については、今後の研究で解明していく予定である。
図1. 酸化コバルトの単位格子体積の温度変化
1) Z-Rietveld Mac版、Windows版の配布
粉末回折装置のリートベルト解析用ソフトウェアZ-Rietveldを開発して来たが、以下のアドレスから新しいバージョン(Mac Z-Rietveld0.9.42.3、Windows Z-Rietveld0.9.42.1)の配布を開始した。
https://z-code.kek.jp/zrg/
クイックガイド(Mac版日本語、Windows版日本語、Mac版英語、Windows版英語)、サンプルデータ(回折データ, 回折計ファイル, 結晶学的データ)を更新した。又、Mac版とWindows版のデータ互換性を達成し、韓国語OS、中国語OSにも対応した。
Z-Rietveldの特徴は、実験室・放射光X線データ解析、TOF型・角度分散型中性子データ解析、X線・中性子の相補的解析ができること、強力なポーリー法解析が可能であり、異方的広がりにも対応することである。
2) Z-Rietveld の次期配布バージョン
複数原子による同一サイトの占有(仮想化学種)、不等式制約条件(原子間距離等の制約)等をMac版に導入した。現在、テスト中である。
図2. 複数原子による同一サイトの占有の指定画面
3) Z-Rietveld開発
元素戦略への対応のため、コリニアな磁気構造解析コードをZ-Rietveldに実装し、いくつかのテストを実施した。Nd2Fe1411Bに対しては8つのサイトのモーメントを決めることができた。又、複雑なバックグランド関数、新しいピークシフト関数の導入を実施した。
4) Conograph
グラフ理論を用いて粉末回折パターンの指数付けをするアルゴリズムを開発してきたが、新しいバージョンとしてMac版GUI、Windows版GUIを実装した。今回は両者の機能の高度化を行った。
5) Z-3D/Z-ATOM開発
回転楕円体表示機能を追加した。
一般課題実施状況
6件の一般課題を実施した。内、2件は、水素ガス雰囲気下でのin-situ実験を一般課題として初めて実施した。また、元素戦略課題についても、3件の実験を実施した。