KENS

KEK

月例研究報告 2月

1. 共同利用状況など

【2015年課題審査】

 2/13に開催された物質構造科学研究所運営会議により、下記のように2015年度課題が承認された。

○ 2015年度S型課題

課題番号代表者タイトル(和文)審査結果
2015S01
(新規)
伊藤晋一(KEK)
益田隆嗣(東大物性研)
高分解能チョッパー分光器による物質のダイナミクスの研究 採択
2015S12
(新規)
清水裕彦(名大理) パルス偏極熱外中性子の利用 保留
2014S03 清水裕彦(名古屋大) パルス冷中性子を用いた中性子基礎物理研究 継続を了承
2014S05 神山崇(KEK) SuperHRPDによる高分解能粉末中性子構造解析法の開発と機能性物質の構造解析研究 継続を了承
2014S06 大友季哉(KEK) 全散乱法による水素化物の規則−不規則構造解析 継続を了承
2009S07 日野正裕(京大KUR) 中性子スピンエコー分光器群(VIN ROSE)の建設と高度化 継続を了承
2014S08 山田悟史(KEK) 中性子反射率法を用いたソフト界面の先進的ナノ構造解析法の開発と工業材料への応用 継続を了承
2014S09 大山研司(東北大金研) 偏極中性子散乱装置POLANOによる静的・動的スピン構造物性の研究 継続を了承
2014S10 米村雅雄(KEK) 特殊環境中性子回折装置を使ったin situ測定による蓄電池材料の構造学的研究 継続を了承

 なお、2014S04(研究代表者:北海道大学大学院工学院 教授 古坂道弘)については今回継続申請が無かったため、平成27年度以降は、申請・審査を経るまでは実験実施を停止することとした。

○ 2015A期J-PARC/MLFにおける大学共同利用中性子実験課題(一般課題)

  大学共同利用中性子実験課題として、63件の申請があり、採択件数41件、予備採択9件、不採択13件であった。

 

2. 研究グループの活動状況

(1) 量子物性グループ

【BL12高分解能チョッパー分光器HRC】

 実験状況

 2月26日にMLF運転が再開され、高分解能チョッパー分光器(BL12/HRC)では、まず装置調整を行った。翌日の2月27日にS型課題による実験を開始し、3月4日までの予定で遂行していたが、2月28日に減速材のトラブルで実験が停止した。そのため、この実験は中止となり、実質半日のデータしか集積することができなかった。続きは後日実施することとした。減速材の復旧後、3月5日にS型課題による別の実験を開始した。この実験は、超伝導マグネットを使用するものである。超伝導マグネットの導入はHRCを共同運営している東京大学が分担し、今年度、東京大学とKEKは共同でHRCに超伝導マグネットを整備してきたが、昨年12月にHRCにおいて超伝導マグネットを用いた非弾性散乱実験のテスト実験を成功させている。この超伝導マグネットは最大14Tまで印加できるが、HRCにおいては10Tまでの励磁に成功している。今回、超伝導マグネットを用いた本格的な共同利用実験を開始した。

150306_report(1).png

図1. HRCの試料槽に設置された超伝導マグネットに実験試料を搭載し、実験準備を行っている様子(3月5日撮影)。

 

【BL23偏極中性子散乱装置POLANO】

 装置建設

  •  各種ユーティリティー配管の設置、ヘッダの設置(図2)
  •  真空槽周辺整備
  •  PPS工事
  •  真空槽の各種試験(図3)

150306_report(2-1)_s.png150306_report(2-2)_s.png

図2. BL23に設置されたPOLANOのユーティリティーヘッド(左)と真空槽(右)。

 

150306_report(3).png

図3. 真空槽制御盤からの真空引き試験。

 

研究会など成果公表

 Workshop: CROSSroads of Users and J-PARC 第14回「スピン系とフラストレーション」で以下の講演を行った

  •  POLANOとMLFの新しい試料環境装置 :横尾哲也(KEK)

 

(2) ソフトマターグループ

【BL16ソフト界面解析装置SOFIA】

 実験状況

 2月26日にMLF運転が再開され、S型課題2件と一般課題2件(うち1件は減速材系の故障によるビーム停止のため未完)を実施した。

 

(3) 水素貯蔵基盤研究グループ

【 BL21高強度全散乱装置NOVA 】

 装置性能評価

 NOVAの特長のひとつはJ-PARCの世界最高出力に由来する高強度であり,最大で1.3×108 n/cm2 sもの中性子フラックスを利用できることが推測されている。現在の出力はその1/3程度であるが、すでにこの性能を検証できる散乱データを得ている。図4にNOVAで測定されたSi粉末による40 msecの回折データを示す。ノイズが小さくないが、シミュレーション曲線と比較してBraggピークが検出できているので,中性子ビーム中の試料における干渉性が成り立てば秒以下の時間における相転移などが測定できることがわかる。

150306_report(4).png

図4. Si粉末の中性子プロファイル(NOVAにおける40 msec測定)とシミュレーションの比較。