1. 共同利用状況など
【MLF運転再開】
11月20日に中性子標的容器に不具合が発生したため、利用運転を停止し、原因追求と標的容器交換作業を行っている。2/20に利用運転を再開する予定である。ただし、標的容器の健全性確保のため、当面の間は200 kWで運転することとなった。
2. 研究グループの活動状況
(1) 量子物性グループ
【 BL12高分解能チョッパー分光器HRC 】
学会等発表
- S. Ibuka, T. Yokoo, S. Itoh, K. Kamazawa, M. Nakamura, and M. Imai,
"Spin and phonon dispersion near the magnetic order-order transition in Mn3Pt",
International Workshop on Itinerant-Electron Magnetism, 2015/9/25-27, Kyoto University, Kyoto
- 伊藤晋一、
「HRCにおける中性子ブリルアン散乱と金属強磁性体SrRuO3のスピン波」、
東北大学金属材料研究所ワークショップ - 中性子プラットフォームによる物質材料科学の進展 -、2015年11月12-13日、東北大学金属材料研究所
- 伊藤晋一、遠藤康夫、横尾哲也、井深壮史、Je-Geun Park、金子良夫、高橋圭、十倉好紀、永長直人、
「金属強磁性体SrRuO3のスピン波におけるワイルフェルミオン」、
中性子科学会年会、2015.12
- 伊藤晋一、横尾哲也、井深壮史、益田隆嗣、吉沢英樹、左右田稔、池田陽一、浅見俊夫、杉浦良介、川名大地、篠崎知子、川村義久、井畑良明、
「HRCの2015年度装置整備」、
中性子科学会年会、2015.12
- 林田翔平、左右田稔、 伊藤晋一、横尾哲也、大串研也、川名大地、H. M. Rønnow、益田隆嗣 、
「非弾性中性子散乱によるマルチフェロイクス NdFe3(BO3)4 の磁気モデルの探索」、
中性子科学会年会、2015.12
- 左右田稔、伊藤晋一、横尾哲也、Georg Ehlers、益田隆嗣、
「カゴメ・三角格子積層系YBaCo4O7における中性子散乱研究、
中性子科学会年会、2015.12
ソフトウェア整備状況
MLF(J-PARC)の夏期停止期間に、データ解析ソフトウェアの機能拡張を以下のように行った。
- 単結晶プロット時に、指定するQb幅によっては、図1(a)に示すような等Qa線に沿った縞模様が生じる。原因は、各ピクセルに寄与するディテクター数が異なるためと推測される。粉末プロット用に実装されていた「ディテクター数規格化機能」を、単結晶プロット時にも使用できるよう機能拡張したところ、図1(b)に示すように縞模様が消失した。
- 粉末プロット時に、指定するQステップ幅が装置分解能より小さいと、ジャギー様の強度ムラが生じる。単結晶プロット用に実装されていた「ディテクター幅を考慮したスムージング機能」を、粉末プロット時にも使用できるように機能拡張したところ、強度ムラが消失した。
- 図1(c)に示すように、ディテクターの効率不均一や、ディテクターの試料を望む立体角の相違が原因で、強度ムラが生じていた。「検出効率補正機能」を追加したところ、図1(d)のように強度ムラが消失した。
- 解析に使用するディテクター領域は、一矩形領域を指定することになっており、不要な散乱や不具合の生じたディテクターを部分的に除いて解析を行うことができなかった。「マスク機能」の追加により、図1(c)の桃色の枠のように、解析に使用しない領域を指定できるようになった。
図1. データ解析ソフトウェア。ディテクター数規格化機能 (a)無し (b)有り。検出効率補正機能 (c)無し (d)有り。(e) マスク機能。
HRC研究会
日時: 2015年12月4日
場所:KEK東海1号館116
主催・共催:物質構造科学研究所中性子共同利用実験審査委員会によるS型課題2016S01の予備審査
プログラム |
はじめに |
13:30 - 13:40 |
伊藤晋一 |
|
研究成果 |
13:40 - 14:10 |
林田翔平 |
マルチフェロイクス物質NdFe3(BO3)4の磁気モデルの探索 |
14:10 - 14:40 |
伊藤晋一 |
金属強磁性体SrRuO3のスピン波におけるイルフェルミオン |
14:40 - 15:10 |
岩佐和晃 |
PrRu4P12における多極子秩序型金属−非金属転移への元素置換効果 |
研究計画 |
15:10 - 15:40 |
益田隆嗣 |
外場環境における研究推進 |
15:40 - 16:10 |
伊藤晋一 |
小角領域における研究推進 |
主査講評 |
16:10 - 16:15 |
守友浩 |
|
【 BL23偏極中性子散乱装置POLANO 】
学会等発表
2015年12月10-12日 日本中性子科学会(和光、市民文化センター)
- 偏極中性子散乱装置POLANOの建設状況III
- 偏極中性子散乱装置POLANOにおける3He中性子スピンフィルターの開発
装置整備
POLANOではJ-PARCの夏期停止期間に主だった大型工事を終了した。引き続き装置周りの整備と軽微な工事を行っており、電気錠改良、ジブクレーンの点検及び修理、天井ハッチの改良などを行った。
POLANO実現に必要な機器開発を継続的に行っているが、その中でSEOP開発に関して、ヘリウムのフィリングステーションをつくばに整備している。従来型の光ポンピング用Rb型にKを添加するハイブリッド型のセル製作に成功した。今後、セルの大型化等の開発に進む。
研究会等
- 2015年12月8日 S型課題研究会 (KEK, つくば市)
POLANOに関するS型課題研究会(2014S09)を開催し、S型課題活動報告、POLANOの建設状況、機器開発状況を発表し、今後の活動方針や偏極中性子を利用した学術研究の展望を議論した。
(2) ソフトマターグループ
【 BL16ソフト界面解析装置SOFIA 】
チラーステージの改良
11月に、これまでに使用していた試料を室温付近(10~70℃)で温度制御するための低温用のチラーステージに改良を加え、運用を開始した。新しい試料ステージは容器全体を温調する循環水に加えて、内部に設置された2つの銅製試料ステージが設置してあり、各ステージはペルチェ素子で独立に温調可能となっている。ペルチェ素子の動作に伴う廃熱は循環水で除去できる構造となっており、0~100℃の範囲でステージ温度を変えられることを確認している。容器内部はガスフローが可能となっており、窒素等をフローさせた状態で銅製試料ステージを冷却することによって結露を防ぐことができる。また、加湿用のバブラーを用いて内気循環させる湿度制御機構を接続できるようになっており、内部の温湿度計により湿度をモニターすることが可能である。
図2. 今回改造を加えたチラーステージの写真。内部の銅板をペルチェ素子で温調可能となっており、ガスフローや調湿を行うことも出来る。
また、上記の温調ステージに接続する循環水について、温調用のチラーを装置制御プログラムから設定変更を行えるように改良を加えた。これにより、リモートでチラーの温度を制御・モニターすると共に、測定用のコマンドラインに組み込むことにより、測定中に温度変化を行うことも可能である。今後はペルチェ素子についても装置制御プログラムによる制御機能を実装する予定である。
図3. 測定プログラムにおけるチラー温度の制御画面。最初に室温から20℃に設定して温度が安定した後、25℃に設定変更して再び温度変化することを確認した。
(5) 水素貯蔵基盤研究グループ
【 BL21高強度全散乱装置NOVA 】
学会等発表
- 町田晃彦、服部高典、佐野亜紗美、大下英俊、池田一貴、大友季哉、
「パリ・エディンバラプレスを使用した高圧力下中性子非弾性散乱測定の実現に向けた評価」、
中性子科学会年会、2015.12
- 池田一貴、大友季哉、大下英敏、金子直勝、瀬谷智洋、鈴谷賢太郎、藤崎布美佳、
「高強度全散乱装置 NOVA における水素吸蔵放出反応のその場測定」、
中性子科学会年会、2015.12
- 秋葉宙、古府麻衣子、草田康平、小林浩和、北川宏、池田一貴、大友季哉、山室修、
「Ru および Pt/Pd 合金のナノ粒子の中性子回折」、
中性子科学会年会、2015.12
- 小野寺陽平、森一広、福永俊晴、大友季哉、
「中性子散乱による Na イオン伝導ガラス/ガラスセラミックスの構造研究」、
中性子科学会年会、2015.12
- 樹神克明、社本真一、池田一貴、大友季哉、武田晃、礒部正彦、伊藤正行、上田寛、
「結晶 PDF 解析による強磁性半金属 CrO2 の局所構造解析」、
中性子科学会年会、2015.12