1. 研究グループの活動状況
(1) 水素貯蔵基盤研究グループ
【 BL21高強度全散乱装置NOVA 】
◆ 論文等
- S. Torigoe, T. Hattori, K. Kodama, T. Honda, H. Sagayama, K. Ikeda, T. Otomo, H. Nitani, H. Abe, H. Murakawa, H. Sakai, and N. Hanasaki,
"Nanoscale ice-type structural fluctuation in spinel titanates",
Phys. Rev. B 98, 134443, 2018.
- Y. Kameda, Y. Amo, T. Usuki, Y. Umebayashi, K. Ikeda, T. Otomo,
"Neutron Diffraction Study on Partial Pair Correlation Functions of Water at Ambient Temperature",
Bull. Chem. Soc. Jpn. 91, 1586-1595, 2018.
(2) 中性子光学研究グループ
【 BL05中性子光学基礎物理測定装置NOP 】
◆ 研究成果
3He/4He標準ガスの精密測定を通じた大気中ヘリウムの3He/4He比の導出(KEK基礎物理グループ、東京大学角野研究室他)
ヘリウムには3Heと4Heという2つの同位体が存在する。この2つの同位体は異なる起源を有する。 3Heは地球の形成の間にもともと閉じ込められていたものの痕跡であるが、4Heは主にウランとトリウムの放射能崩壊によって生成される。よって、この2つのヘリウム同位体比を地球化学と宇宙化学の強力なトレーサとして使用することができる。
J-PARC BL05で行っている中性子寿命測定実験では良い精度で3Heガスを制御している。本研究では、この中性子寿命実験装置のガスコントロールシステムを用いて基準となる3He/4He比ガスを作成し、地球化学分野で使用されている標準ガス(The helium standard of Japan, HESJ)の3He/4He比を0.4%の精度で正確に測定した。今回測定したHESJの3He/4He比を用いることにより、大気中ヘリウムの3He/4He比を1.340±0.006 ppmと世界最高精度で決定することができた。これは過去の測定のうち比較的低い3He/4He比を支持する結果であった。データのずれについては今後の研究が待たれる。
大気ヘリウムの3He/4He比は相対的には精度良く測定されており、地球上で時間的、位置的に一様であることが知られており、今回の絶対値測定の結果から大気ヘリウムを3He/4He比を標準として利用することが可能になる。また、tritium-3He年代測定や宇宙線暴露年代測定といった3He量の絶対値が重要になる測定において、より精密な決定を可能にする。
図1. 過去の大気中の3He/4He比測定値と今回得られた結果 (赤) 過去の測定のうち低い3He/4He比を支持する結果であった。
◆ 論文等
- Kenji Mishima, Hirochika Sumino, Takahito Yamada, Sei Ieki, Naoki Nagakura, Hidetoshi Otono, Hideyuki Oide,
"Accurate determination of the absolute 3He/4He ratio of a synthesized helium standard gas (Helium Standard of Japan, HESJ): Towards revision of the atmospheric 3He/4He ratio",
Geochemistry, Geophysics, Geosystems (2018) 19.
◆ 学位論文
- 富田 龍彦 博士 九州大学:2017B0332, 2017A0230, 2016B0272, 2015A0316, 2014S03 (2018/9/25)
“中性子寿命測定の高精度化に関する研究”.
- 片山 領 博士 東京大学: 2015A0317, 2014B0253, 2015A0246, 2014B0263, 2013B0161, 2014S03 (2018/9/10)
“Study of Optical System of the Ultra-Cold Neutron with High Intensity Pulsed-Beam at J-PARC for Discovery of Neutron Electric Dipole Moment”
◆ その他成果
▪ 研究会報告
講習会名:J-PARCワークショップ“第3回 Concept of Neutron Sources”
新しい概念の中性子源開発を目指す研究会、J-PARCワークショップ“第3回 Concept of Neutron Sources”を開催した。光各分解反応、レーザー核融合、D-D反応を用いた新しい中性子発生方法や超流動ヘリウムを用いた超冷中性子源発生、ナノダイヤモンド反射材、MLF第2ターゲットステーションなど合計13件の講演が行われた。
日時: 2018年8月21日(火) 10:00-17:00
場所: KEK東海キャンパス1号館
主催・共催:J-PARC, KEK中性子