11月1日付で、菊地龍弥氏が特任助教(住友ゴムとのクロスアポイントメント)として着任し、佐野亜沙美氏が特別教授(JAEAとのクロスアポイントメント)に昇任した。
◆ 研究成果
中性子反射率法に対する精密中性子集束ミラーの適用 ―― 最新の結果と将来の展望
中性子反射率計SOFIAは表面・界面のナノ構造を評価するための装置で、リチウムイオン電池の電極などの評価にも用いられている。今回、KEK/J-PARCセンターの山田は理研・京大と共同で開発した超精密中性子集光ミラーを実用化することにより、測定に要する時間を大幅に短縮することに成功した。また、この集光ミラーを複数組み合わせることにより、SOFIAにおいて世界で例の無い新技術「多入射反射率法」を実現するための光学系を提案した。これが実現すれば、電池の充放電過程で生じる電極界面における分子スケールの変化を、短時間かつ高精度でリアルタイムでオペランド計測できるようになる。この新技術を用いた高度化計画は現在進行中である。
中性子の光学素子はまだ発展途上にあり、本格利用している例は世界的に見ても多くない。特に、本研究で実用化した超精密集束ミラーは世界最高レベルの性能を誇っており、次世代のリチウムイオン電池と目されている全固体電池の他、燃料電池、有機ELといった様々なデバイスに対して中性子反射率法を用いたリアルタイム計測の活用が進むと期待している。
参考文献
図1. 精密中性子集束ミラーの実験結果 (プレス発表より転載)
試料位置で集束ミラーの方が従来法のおよそ倍の強度となる一方、得られた反射率の解析結果は両者で一致。中性子反射率法でしか観測できない界面層の観測に成功した。
図2. 多入射反射率法の模式図 (プレス発表より転載)
従来の反射率測定では厚い膜の干渉と薄い膜の干渉は別々にしか測定できないため、同時にリアルタイム計測を行えない。多入射反射率法では、角度の異なるビームを同時に試料に入射することにより、厚い膜の干渉と薄い膜の干渉を一度に計測できるため、両方の条件で同時にリアルタイム計測が可能となる。
◆ 論文等
◆ 論文等