3月1日付で、横尾哲也氏が教授に昇任した。
◆ 装置整備・開発等
検出器の交換
中性子反射率計SOFIAではこれまで有感領域100mmφの浜松ホトニクス製2次元位置敏感型光電子増倍管(R3292)と0.25mm厚の6LiF/ZnSシンチレーターを組み合わせ、中性子検出器として使ってきた(通称RPMT検出器)。しかし、R3292が廃番となり入手できなくなったため、今後行う検出器更新に備えてKEKの佐藤節夫氏が開発した通称FRP検出器に交換することとした。この検出器はR3292の代わりに有感領域48.5mm角のマルチアノード型光電子増倍管(H12700)に交換した物で、8x8個あるアノードからの信号を抵抗ネットワークで接続することにより、全体で1つの位置敏感型検出器として動作する仕組みとなっている。これにより、光電子増倍管のみを取り替えることにより、検出器の回路はそのままでRPMT検出器を置き換えることが可能である。FRP検出器はRPMT検出器と比較して有感領域が小さいというデメリットがあるが、逆に位置分解能の向上するメリットにも繋がる。中性子反射率計はその原理上、試料から反射するビームは小さく、また補正を行う上で位置分解能が高い方が好ましいため、FRP検出器は非常に良い代替検出器である。
図1は交換前後の検出器を比較した写真である。RPMT検出器は有感領域に比して検出器サイズが大きいのに対し、FRP検出器は非常にコンパクトである。また、今回の更新にあたっては6LiF/ZnSシンチレーターの厚さを0.4mm厚に変更して検出効率の向上を図った他、計数率を向上させるためにアンプの時定数を短くし、信号処理回路も佐藤節夫氏が開発した新しいNeuNET(MLF共通の検出器回路)へと変更し、処理速度の向上を試みた。
図1. RPMT検出器(左)とFRP検出器(右)
図2に歪み補正用に取得したメッシュ像の結果を示す。この像は検出器を上下左右に動かしながら非常に絞った中性子ビームを受け、検出位置をプロットしたものである。信号の線形性が良ければ検出位置は等間隔になるはずだが、実際には端に行くと歪みが生じるため、このマップを基準に補正を行う。RPMT検出器はこの歪みが大きい検出器であったため補正は必須であったが、FRP検出器は線形性が高く、補正の際に生じてしまう系統誤差が軽減できると期待できる。また、シンチレーターを厚くしたことにより波長0.18nmの熱中性子での検出効率が約18%から36%に倍増した。冷中性子(0.9nm)での検出効率は50%から60%への向上と熱中性子よりも少ないが、測定の際の律速となるのは熱中性子領域での中性子のカウント数であるため、今回のアップグレードにより測定時間が今までのおよそ半分に減らせると期待される。
図2. 各検出器の歪み(左: RPMT検出器, 右: FRP検出器)
コロナ禍対応
緊急事態宣言の再発令を受け、来所できなくなったユーザーのために試料を送付してもらっての代行実験を4課題受けた(これとは別にキャンセルが1件)。また、3月までに追加で1件の代行実験(キャンセルもさらに1,2件)を予定している。
このような状況に対応するために、装置担当者がリモートで実験装置にアクセスできるよう整備した他、データの受け渡しのためにKEKが提供するクラウドサービスを利用するなど、リモート環境の整備を行った。これは、これまで通り来所して行う実験においても有用であり、ユーザーの利便性向上にも繋がっている。
◆ 論文等