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3He 冷凍機(共通機器)の導入および EPICS による制御システムの実装
MLF BL21、NOVA では試料環境機器に由来するバックグラウンドの低減に有効なラジアルコリメータ(NOVARC)の導入以降、試料環境チームが管理する共通SE機器への拡充を行ってきた。2021年度末には 3He 冷凍機の導入、そして EPICS 制御-IROHA2 シーケンスサーバーの連携システムの実装を行ったので報告する。
NOVA の設計上、試料高さ(フランジ面からビーム位置)が他のビームラインと異なるため従来の 3He 冷凍機のままだと利用できない。そこで試料環境チームに改良して頂き、チャンバー、ステージを延長する NOVA 用のエクステンションを接続することで実験可能となった。制御系に関しては 3He 冷凍機は Keyence 社製の PLC で制御されており、加速器制御ソフトウエアで用いられている EPICS の GUI ツール(CSS GUI)を介して PLC を制御するシステムに加え、オンライン温度モニタとして Web を介して⾒えるようGrafana GUI ソフトウエアによるシステムを、試料環境チームの山内康弘氏(NAT)や高橋竜太氏(JAEA)の協力のもと安芳次氏(KEK)に構築して頂いた。測定シーケンスに関しては、IROHA2 のシーケンスサーバーからファサードを通して EPICS へ命令を投げるということで自動制御測定が可能となっている。
図1に CSS GUI の制御パネルの一例を示す。3He 冷凍機の手動制御パネルと同じ機能をリモートで行えるようにしている。
図1. CSS GUI の Heater 自動制御パネル
図2には Grafana GUI の一例を示す。利用するデータベースはデータロガーと別サーバーに定期的に記録されているため、過去に遡ったデータ表示も可能となっている。
図2. Grafana GUI による温度ログ
図3に IROAH2 シーケンスサーバーによる測定シーケンス例を示す。EPICS へコマンドを投げるファサードを使うことで、3He 冷凍機の EPICS 制御および測定 DAQ の自動化が可能となっている。
図3. IROHA2 シーケンスサーバーと CSS GUI
これらのシステムを使って、ErF3を用いた中性子回折実験を行った。ErF3は TN = 1.05 Kにおいて反強磁性相転移を起こし、non-collinear 磁気構造を取る[1]。粉末試料は BL08 より提供して頂いた。10分測定の散乱プロファイルを図4(a)、反強磁性磁気構造を反映した磁気散乱 Bragg ピークである 100(d~6.4 Å)の積分強度温度依存性を図4(b)、回折プロファイルの温度依存性を図4(c)に示す。温度はサンプルステージの温度となっている。温度冷却に伴い転移点温度で磁気散乱ピークの積分強度がorder parameter 的に増加していることを観測し、全体を通して 3He 冷凍機実験が NOVA において利用可能であることを確認できた。
図4. ErF3 における(a)最低温の10分測定プロファイル、(b)100 磁気散乱ピークの積分強度温度依存性、(c)回折プロファイルの温度依存性。
安芳次氏、山内康弘氏、高橋竜太氏の協力を得て、EPICS 制御に関するマニュアル(制御・モニタ・アーカイブシステムユーザガイド)と NOVA 用 3He 冷凍機実験マニュアルも完成している。本実験によって実装された自動シーケンス測定の確認も完了したことから、今後ユーザ利用への展開を行っていく予定である。
MLFの共用ビームライン BL02 でもこれらのシステムを導入して実験が行われ、システムに問題なく無事実験が終了したことを加筆しておく。
Reference
[1] K. Kramer, H. Romsted H. U. Giidel, P. Fischer, A. Murasik, M. T. FernandezDiaz, Eur. J. Solid State Inorg. Chem 33, 273 (1996).
◆ 論文等