実験責任者 |
所属 |
ステーション |
期 間 |
佐藤 宇史 |
東北大学 |
28A/B
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2024/04〜2027/03 |
近年、室温で量子ホール効果を示すグラフェン、時間反転対称性によって保護された金属的エッジ状態を持つ2次元トポロジカル絶縁体、バルクの超伝導転移温度を凌駕する単層FeSe薄膜など、新たな原子層物質の発見が相次ぎ、大きな注目を集めている。原子層物質の多くは、ディラック電子バンドなどの特徴的なエネルギー分散を持ち、その特殊なバンド構造が超高移動度などの際立った物性の発現に直接関与ししている。これまでARPESは、その表面敏感性を生かして、バルク結晶の表面に加えて原子層物質の電子状態を直接観測することで、電子物性解明において重要な役割を果たしてきた。最近では、捻り原子層グラフェンにおける超伝導の発見を契機にして、原子層同士を任意の捻り角で積層したり異なる原子層同士を重ねたりするなどの原子層積層技術が著しく進展しており、超伝導やモアレ磁性などの顕著な物性が次々と報告されている。しかし、このような積層系をmmスケールで均一に作製するのは困難であり、大面積で均一な清浄試料表面が要求される従来のARPESによる測定は比較的困難であった。また原子層物質では、ARPES観測が比較的容易な結晶表面ではなく、エッジなどの局所領域にトポロジカル状態が現れる量子スピンホール絶縁体や高次トポロジカル絶縁体などの物質の提案が多くなされているが、空間分解能の不足により、エッジに由来した電子バンドは観測例が殆どない。この問題を解決するための突破口となるのが、空間分割測定によるエッジ・表面・バルク電子状態の分離観測である。本研究では、BL28にける偏光可変高輝度光を利用したマイクロ集光ARPESエンドステーションの整備・改良を行って、空間分割した電子状態の直接観測を行う。さらに、原子層トポロジカル物質、原子層超伝導体、原子層磁性体、原子層強相関物質、捻り原子層物質などの原子層物質における平坦バンド、モットギャップ、エッジ状態などの局所微細電子構造を高空間分解能かつ高効率で直接決定することで、局所電子状態を明らかにすることを目的とする。マイクロARPES装置による原子層物質の研究を強力に推進することにより、原子層ハイブリッドにおける電子状態の解明が進展し、特異物性発現機構の解明やデバイス応用に資する基盤電子構造が確立されることで、原子層物質における物質相・量子現象の開拓が大きく進展すると期待される。
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関連課題 |
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