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2024S2-003 放射光可視化に立脚した透明モットメモリの開発

実験責任者 所属 ステーション 期  間
組頭 広志 東北大学 2A/B,28A/B 2024/10〜2027/09
 透明電極・素子は、ディスプレイや太陽電池などの幅広い分野で使用されており、高度情報化社会を支えるために更なる高性能化が求められている。しかしながら、従来の酸化インジウムスズ(ITO)に代表される酸化物半導体では、その性能は原理的な限界を迎えている。そのため近年、SrVO3等の強相関伝導性酸化物が新たな透明電極・素子材料として注目されている。これらの伝導性酸化物は、金属であるにもかかわらず、電子の有効質量が大きいため可視光透明性を併せ持つといった特長がある。さらに、当研究室ではこれまで酸化物二重量子井戸構造の共鳴トンネル現象を用いて、モット転移(金属・絶縁体転移)を制御できることを見出してきた。このモット転移は、電圧印加で制御可能であるため、バリア層に強誘電体を用いることで透明酸化物で構成された「透明モットメモリ」の実現が可能になる。そのため、透明強相関電極・トランジスタに加えて、新たな「透明強相関回路」が構築できる可能性を示している。
本研究の目的は、透明強相関酸化物(電極材料)を用いて透明な共鳴トンネル型モットメモリを創成することにある。具体的には、透明酸化物を用いてモット転移量子井戸層/ バリア層(強誘電体)/ 金属量子井戸層からなる二重量子井戸構造を設計し、強誘電バリア層の極性に依存した量子準位間の共鳴トンネルを利用してモット転移層における金属・絶縁体転移(1/O動作)を制御するという透明な共鳴トンネル型モットメモリの実現を目指す。そのために、角度分解光電子分光(ARPES)装置に電圧印加機構を導入し、放射光を用いてメモリ状態の量子化状態を可視化することで、原理検証とその知見に基づいた構造設計を行う。
本研究を発展させる鍵は、デバイス動作(1/O動作)時に酸化物量子井戸内に誘起される量子化状態の直接観測と、その知見に基づいた精密な構造設計による強相関波動関数の制御である。そのため本研究では、これまで建設・改良を進めてきた「in-situ ARPES +レーザーMBE複合装置」(BL2A)およびµARPES装置(BL28)に電圧印加システムを組み込むことで、デバイス動作時の量子状態変化を正確に可視化することで、素子開発を行う。この「先端計測に立脚した素子設計」という切り口により、透明強相関電極およびそれらにより構築された透明モットメモリの実現を目指す。
関連課題

成果

  • 論文等(KEK放射光共同利用実験研究成果データベースの画面が別タブで開きます)
  • PF Activity Report

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