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3. 研究成果 3.2 標準理論の精密検証とその予言する新しい現象の発見 3.2.6 グルーオンの自己相互作用の証明 量子色力学の特徴は非可換ゲージ理論であるという点にあり、具体的にはゲージ粒子で あるグルーオンも物質粒子(クォーク)と同様に「色電荷」を持つことにある。これは、電磁相互作用の担い手である光子にはない性質である。これが正しければ、グルーオン自己結合に起因する現象が存在するはずである。 電子・陽電子反応では、クォーク対生成をもとに4個のハドロンジェットが出現する過程の中に初めて現れると期待される。図31の4種類のプロセスのうち、図31a)がそれにあたる。クォークは1/2、グルーオンは1のスピンを持ち、クォーク・グルーオン結合はベクトル型であることから、4ジェットになるプロセスによってグルーオンとクォークとに特有の角度相関が期待される。エネルギーの高いトリスタンでは、以前のよりエネルギーの低い実験と比較して、個々のジェットを識別しやすくなり、このような複雑な現象の研究が可能になった。 4ジェット終状態は図31a)の他に図31b)、c)とd)に示す過程からも発生する。これを分離するために特有な角相関を調べる。例えば、4つのジェットをそのエネルギーの大きさの順にJ1、J2、J3、J4とする。J1とJ2のベクトル和をV12、J3とJ4のベクトル和をV34とし、V12とV34とのなす角度、分布を調べることにより、図32に示すように量子色力学の予言通りにグルーオンの自己結合を明瞭に確認した。こうして、素粒子像の根幹にかかわる成果として、グルーオンは「色電荷」を持って自己結合できる粒子であることを、世界で初めて実証できた。
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