強相関電子系をはじめとした物性研究で活躍してきたμSR実験であるが、これまでの舞台はどちらかというと極低温下が主であったようである。 これは観測する対象が超伝導電子密度であったり磁気基底状態であったりすることから自然な成り行きであるといえる。
しかし、放射性プローブであるミュオンには測定感度は温度によらないという大きな特徴があり、中性子・放射光で実施される高温実験と同じくらいミュオンにも高温実験の可能性はあるはずである。
近年、電池材料や水素吸蔵物質への関心の高まりに呼応して、高温下でμSR実験を実施する機会も増えつつある。 本講演ではJ-PARC ミュオンビームラインで実施された高温実験のいくつかを紹介して、高温μSR実験の今後の展望を述べる。