非常に明るい高輝度なX線を用いて実験が行えるようになった第三世代放射光の本格的な稼働時期と、フェムト秒レーザー技術の飛躍的な発展が良いタイミングで重なった90年代後半より、X線をパルス光とみなした時間分解測定からX線分子動画を作成し、外部刺激によって超高速変化する構造や電子状態を動的に理解しようとする研究が、世界中の放射光施設で精力的に行われてきました。KEKにおいても2002年にPF-ARを大強度パルス放射光リングとして高度化改造し、蓄積リング型の放射光施設では世界最高レベルのパルス強度を誇る、極めて時間分解実験に適した光源を運用してきました。また近年は、X線自由電子レーザー(XFEL)の登場により、フェムト秒オーダーの素励起情報を直接観測する試みがスタートしています。
本講演では、回折・散乱・吸収・発光といった従来の放射光実験を、各加速器の特徴を考慮し、時間分解測定に適応させることで分子動画を作成する手法的な技術紹介と、PF-ARとXFELにおいて、これまでに行ってきた光機能性試料や、外場として光刺激を用いた光誘起相転移の動的研究について、さらには震災以降、特に注目を集めているグリーンイノベーションに関連した人工光合成システムや光触媒等のX線分子動画を用いた動的研究について詳しく紹介します。