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◆15-06 SmX(X=S,Se,Te)の圧力誘起価数転移におけるSm L3端XASの理

物構研談話会
  • 日時:9/3(Thu.)11:00~12:00
  • 場所:4号館2階輪講室1
  • 講師:小谷章雄 氏(KEK協力研究員)
  • 題名:SmX(X=S,Se,Te)の圧力誘起価数転移におけるSm L3端XASの理論
  • 要旨:

    SmX (X = S, Se, Te) は常圧では絶縁体で、Smの価数はほとんど2価であるが、加圧によって絶縁体・金属転移をおこし、価数が急激に変化する。最近、Sm L3 XASの高分解能測定により、圧力誘起価数転移の詳細が明らかにされた[1]。本研究では、まずバンド計算結果を参考にして3つの物質のSm5dバンドの状態密度(DOS)をモデル化し、それを基にしてXASスペクトルの圧力依存性を解析するとともに、圧力誘起価数転移の機構を明らかにする。まず、この状態密度を用いて常圧でのXASを解析すると、5d電子に対する内殻正孔ポテンシャルの大きさUdcがX = S, Se, Teに対して1.2eV、1.0eV、0.8eVと系統的に減少することがわかった。圧力誘起価数転移では、圧力によって4fバンドから5dバンドの底付近に電子移動が起こるものと考え、設定した5dDOSモデルに加えて、5d電子に対する4f正孔ポテンシャルUfdをX = S, Se, Teに対して、0.87 eV、0.79 eV、0.69 eVと選べば、価数の圧力依存性が実験結果をかなり良く再現した。この際に、5d電子によるUfdに対する遮蔽効果なども考慮した。圧力下でのXASスペクトル形状は、5dDOSモデルに上記のUdc、Ufdの値とそれらに対する5d電子の遮蔽効果を加味して計算することができる。3つの物質に対して、種々の圧力下で計算されたXASの形状は、5d電子の遮蔽効果によるUdcおよびUfdの減少因子を適当に選べば、実験結果を良く再現した。この減少因子を5d電子数の関数としてプロットすれば、物質に依らずにほぼ同一曲線上にのることがわかった。

    [1] I. Jarrige et al: Phys. Rev. B 87 (2013) 115107.