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物構研News No.12

No.12 2015年2月発行

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Contents

  • 国際光年IYL2015
  • 分子誕生の瞬間
  • 研究トピックス
  • [物性・環境] バーミキュライトが多量のセシウムイオンを取り込む仕組みを解明
  • [材料] 有機半導体表面での構造変化を初観測
  • 施設情報
  • 中性子 POLANO 真空散乱槽搬入
  • コンパクトERL レーザーコンプトン散乱X線ビームラインの建設
  • 放射光リング アンジュレーターを搬入
  • イベント
  • 理系女子キャンプ
  • 科学技術週間 KEK施設公開
  • お知らせ
  • 第3回物構研サイエンスフェスタ/第6回MLFシンポジウム/第32回PFシンポジウム

国際光年 IYL2015

今年2015年は、ユネスコが定める「光と光技術の国際年(国際光年)」。
ちょうど1000年前、「光学の父」とも呼ばれるイブン・アル・ハイサムによる光の屈折や反射など光学の基礎を築いた研究や、1905年のアインシュタインによる光を量子と考えた光電効果に関する理論の発表、続く1915年には光の進み方も取り込んだ場の方程式を導いた一般相対性理論を完成させるなど、光科学にとって歴史的な節目を記念した年でもある。
1月19、20日にフランス、パリでこのオープニングセレモニーが開催され、国際光年が幕を開けた。

詳しくはこちら(KEKハイライト)

分子誕生の瞬間

まだ誰も見たことのない現象を捉えた瞬間、どれほど興奮するだろう。これぞ研究者の醍醐味かもしれない。
全ての物質は原子から出来ている。原子が分子となり、それらが何百万兆、何千万兆と集まって、初めて私たちが認識できる物質となる。
これは良く知られた事実であるが、原子の間に化学結合が作られ、新しい分子として構造が形成されていく過程そのものを、直接観た人はまだ誰もいない。

研究トピックス

[物性・環境] バーミキュライトが多量のセシウムイオンを取り込む仕組みを解明

日本原子力研究開発機構、福島環境安全センター・量子ビーム応用研究センターの元川竜平研究副主幹、矢板毅ユニット長、KEK物質構造科学研究所の遠藤仁 准教授、電力中央研究所の横山 信吾 主任研究員、山形大学工学部の西辻 祥太郎助教による共同研究グループは、土壌成分のひとつである粘土鉱物「バーミキュライト」が、セシウムイオンを多量に取り込むメカニズムを解明した。
粘土鉱物は、厚みの薄いシート状の無機物が積み重なった構造をしており、上下のシートの隙間(層間)に陽イオンを取り込む性質を持っている。これまで、福島県内の汚染土壌中で、バーミキュライトの層間にセシウムイオンが強固にかつ選択的に取り込まれることが知られており、大きな関心が寄せられていた。

詳しくはこちら(KEKプレスリリース)

[材料] 有機半導体表面での構造変化を初観測

大阪大学大学院基礎工学研究科 若林 裕助 准教授を中心とする合同研究グループ(大阪大学、東京大学、理化学研究所)は、有機半導体表面では結晶内部と大きく異なる構造が実現していることを初めて解明した。
有機半導体は安価、軽量なデバイス素材として、有機ELディスプレイなどで既に実用化されている。通常のシリコンの代わりに有機半導体を使ってトランジスタを作ると、有機半導体の表面近傍数ナノメートルを電気が流れるが、このような表面付近の狭い領域で分子がどのように並んでいるかはほとんど知られていなかった。

詳しくはこちら(KEKプレスリリース)

施設情報

中性子 POLANO 真空散乱槽搬入

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1月15日(木)、J-PARC物質・生命科学実験施設(MLF)の中性子ビームラインBL23に、実験装置の基盤となる真空散乱槽が搬入された。
扇形の真空槽はおよそ直径5メートル、高さ3メートル、重量約20トン。KEKと東北大学で締結した大学連携の下、共同でMLFに建設している偏極中性子散乱装置POLANO(POLarization Analysis Neutron Spectrometer)で使用される。製作現場(日立造船株式会社)の大阪築港工場より特殊トレーラーにて2日間かけてJ-PARCまで輸送された。

コンパクトERL レーザーコンプトン散乱X線ビームラインの建設

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コンパクトERLでは、レーザーコンプトン散乱X線のビームライン建設が進んでいる。これは日本原子力研究開発機構(JAEA)と共同で研究開発しているもの。JAEAから大強度レーザーが搬入され、加速器室内ではレーザー光蓄積装置の真空チャンバー、ビームラインが設置された。
電子ビームとレーザービームを衝突させるレーザーコンプトン散乱X線の発生を目指し、ビームの調整運転が行われている。

放射光リング アンジュレーターを搬入

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長期シャットダウン中のフォトンファクトリーでは、加速器リング内で改造が行われている。高輝度かつ、水平・垂直・円偏光X線を作りだすためのアンジュレーターが搬入された。長さ約4メートル、重量約12トンもあるアンジュレーターを挿入するため、加速器リングのビームパイプを一度取り外しアンジュレーターを設置してまた繋ぎ合わせるという、大がかりな作業が行われている。
このアンジュレーターはBL13とBL28に設置され、来期の運転から運用を開始する予定。

イベント予定

4/2(木),3(金)
理系女子キャンプ

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女子高校生に科学に興味を抱いてもらえるよう、科学実験、分野の第一線で活躍する女性研究者による講義、大型実験施設での研究者とのコミュニケーションを交えた施設見学、女子大学院生との懇談会などのプログラム(※受付終了しました)

詳しくはこちら

4/13(月)~19(日)
科学技術週間 KEK施設公開

期間中、KEKコミュニケーションプラザ(常設展示)の公開、および17(金)、18(土)にはBファクトリー実験施設・フォトンファクトリーにて実験施設見学ツアーを行います。

お知らせ

第3回物構研サイエンスフェスタ/第6回MLFシンポジウム/第32回PFシンポジウム開催

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3月17日(火)18日(水)、つくば国際会議場(エポカルつくば)にて物構研サイエンスフェスタをMLFシンポジウムと合同で開催します。

詳しくはこちら