No.14 2015年8月発行
水素元年と政府が位置付けた2015年、
水素について、何が分かって、何を知りたいと考えているのか。
そして観測するには、どうすれば良いのか。
水素に関わる研究者同士、率直に語り合いました。
折茂:私はドイツの南の方のシュトュッツガルトのマックスプランク研究所に一年半留学していたんです。そこでは材料中の水素の動きをNMRで調べる、ということをやっていました。 材料というのは、マグネシウム系の合金とか、カーボン系の材料とか…水素貯蔵材料として、解析とか、開発をしていました。私が大学4年生の時は、丁度YBCO(イットリウム系超伝導体)が見つかった直後だったので。 そこに水素を入れて、超伝導特性がどう変わるかとか…。水素をいれるとTc(超伝導移転温度)が変化するんですよ。
山田:水素のドーピング?それは最近の細野さんの(鉄系超伝導)と同じだね。
折茂:ええ、結構近いですね。実はちょっとTc 上がってたんですよ。
岩手医科大学薬学部の阪本 泰光助教、昭和大学薬学部の田中 信忠准教授、長岡技術科学大学、JAXAの研究グループは、歯周病原因菌の増殖や病原性に関与する酵素PgDPP11の立体構造をフォトンファクトリー、SPring-8を用いた放射光X線回折実験により解明した。
歯周病は、世界中で最も感染者数の多い感染症であり、口腔疾患だけでなく、糖尿病や動脈硬化などの疾患の悪化への関与も指摘されている。歯周病原因菌の一つ、Porphyromonas gingivalisは、タンパク質やペプチドを栄養源とする細菌。
この菌の酵素が、タンパク質やペプチドを分解し、吸収する様子を分子レベルで理解することは、それらを阻害して菌の生育を妨げる薬物の開発に役立つと考えられている。
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東京電機大学工学部環境化学科の薮内 直明准教授らの研究グループは、ニオブとリチウムを主成分とした新規酸化物を合成、リチウム(Li)イオン電池の新しい正極材料として有望であることを発見、その充放電に伴うニオブとマンガンの電子状態をフォトンファクトリーで観測した。
蓄電池であるLiイオン電池は、小型の電子機器用(~10Wh)から大型の自動車用(~20kWh)まで、生活のあらゆる場面で広く利用されている。電力スマートグリッドシステムなどのため、Liイオン電池の高性能化が進められている。
蓄電池は、正極、負極、そしてイオン伝導体から構成され、これらをLiイオンが移動することで、充放電される。電池の大容量化には、電極材料に高エネルギー密度でLiイオンを脱挿入することが必要である。
これまでの研究で、負極材料では従来技術を大きく上回る材料が開発されているが、正極材料では、まだ高エネルギー密度のものはなく、次世代Liイオン電池開発の足かせとなっていた。
詳しくはこちら(物構研トピックス)
平成27年6月1日より、金谷 利治 KEK 物構研教授が、J-PARCの物質生命科学ディビジョン長に就きました。
J-PARC物質・生命科学実験施設(MLF)のミュオンDラインでは、ミュオンを標的から実験ホールまで導くための超伝導ソレノイドの交換が行われた。
ミュオンは、陽子ビームが炭素標的に衝突し、核反応したパイ中間子が崩壊することによって得られる。ソレノイドは、パイ中間子を効率よく運びながらミュオンに変換させるため、強磁場が必要である。
新しい超伝導ソレノイドは、旧型よりも内径がやや広がり、かつソレノイドの両端にあるコールドウォールをウォームウォールに変更された。
京都大学(現PSI)の山田 雅子氏らは、KEK物構研の三島 賢ニ 特別准教授らの中性子光学研究グループと共同で、中性子ビームを集光する磁気レンズを開発した。
中性子は電荷を持たないため、陽子や電子のように電場による集束、加速ができない。今回、広いエネルギー(波長λ)分散をもつワイドバンドのパルスビームを色収差なく集束できるレンズ
「強度変調型永久六極磁石(modulationg-Permanent Magnet Sextupole,mod-PMSx)を実現した。
実験装置・施設の見学や、研究者による講演、実演など、楽しい企画を用意しています。加速器科学の最先端の様子をぜひご覧ください。
中性子、ミュオンを用いた実験に興味を持ちながらまだ足を踏み入れていない若手研究者を対象に、中性子、ミュオンを用いた物性実験に関する講義、演習を行う短期スクールです。
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