No.15 2015年11月発行
タンパク質の精製や結晶化の条件探しが、構造生物にとってボトルネックとなっている今、ビッグデータを活用することで活路を見出そうとしている。
こうしたことを狙って動き始めているのがPReMo(プレモ、Photon Factory(PF) Remote Monitoring System)。元来、PFで行われる実験の様子を外からモニターするために開発されたシステム。
PReMoは測定結果を管理するデータベースでもあり、国内外の研究者が集うPFには、膨大なデータが蓄積される。ここにビッグデータの解析が加わることで、新たな研究の形を作ろうとしている。
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印刷技術を利用して、電子回路やデバイスなどを作る「プリンテッドエレクトロニクス」は製造業の在り方を大きく変える可能性がある。大型の真空装置や高温処理が不要になれば、コストや、資源、環境負荷といった面で利点がある。
そのためには材料をインクのように溶かして使える、有機物の半導体や誘電体(絶縁体)が一つの方策として研究されている。
もし有機物で作ることが出来れば、薄くて軽い、フレキシブルなディスプレイなども可能になると考えられている。
KEK物質構造科学研究所の柳下明シニアフェロー、中嶋享特任助教(現JASRI博士研究員)らの研究グループは、東京大学、立命館大学、千葉大学、京都大学、日本原子力研究開発機構、理化学研究所、高輝度光科学研究センターと共同で、XFEL施設「SACLA」を用いて、向きを揃えたヨウ素分子(I2)からのX線光電子回折像を観測することに成功した。
光照射により化学変化を起こす多くの光化学反応は、ピコ~フェムト秒で進行する反応であり、超高速で進行する。その分子構造変化の原理は、解明されているとは言えず、光照射を発端とする化学反応の全容解明、すなわち「分子ムービー」の実現は、時間的、空間的に究極の反応を可視化することであり、世界の分子科学者が実現に鎬を削っている。
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群馬大学大学院の砂口尚輝助教、東京理科大学の安藤正海教授(KEK名誉教授)らのグループは、放射光の特性を利用したX線暗視野法と呼ばれる位相コントラストX線CT(断層撮影)法のアルゴリズムを改良し、従来見えなかった硬組織と軟組織が混在する領域を鮮明に撮像する方法を開発した。
X線位相コントラストCT法は、試料を通り抜けることによって生じるX線の位相のずれから像を構築するイメージング法。この方法では、レントゲンのようなX線吸収を利用した手法では見えにくい、軟骨や乳がんといった軟組織、骨の微細なひびなどを高感度で捉えられることから、多くの研究グループが実用化を目指して開発を進めている。しかし高感度であるが故に、骨や石灰化などの硬組織が含まれた部分では、測定のダイナミックレンジを超えてしまい、画像全体に悪影響を及ぼす現象(硬組織アーチファクト)が、位相コントラスト法の共通の克服すべき課題となっていた。
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フォトンファクトリーにあるタンパク質結晶構造解析ビームラインBL-17Aでは、結晶化プレートのまま放射光測定が可能になった。
タンパク質X線結晶構造解析では、従来、タンパク質の結晶を1つずつクライオループですくい、ゴニオメータヘッドの先端に取り付け測定していた。今回、新たに導入した手法では、結晶を取り出すことなく、結晶育成させていたプレートのまま装置に設置、ドロップ中にある結晶に直接X線ビームを照射し回折データを測定できる。
J-PARC物質・生命科学実験施設(MLF)で建設が行われているBL23のPOLANO(偏極中性子散乱装置)は、この夏に大型工事を行いビーム受け入れに向けて着々と準備が進められている。POLANOは中性子のスピン偏極を利用し、非弾性散乱を測定する分光器で、TOF法を用いた装置では世界的にみても新しい手法の装置となる。
POLANOのビームラインは主に中性子を装置まで高効率で輸送するガイド管や中性子パルスの整形、弁別などを行うチョッパーなどで構成されている。写真は今夏設置されたチョッパーの一つ、ディスクチョッパーとガイド管である。ディスクチョッパーは直径700mm の中性子吸収材と透過材でできた円盤で出来ている。パルス発生に同期させて回転させることによって、ある一定時間に通過する中性子だけを選択することが可能で、白色中性子のバンド幅を選択するいわゆるバンドチョッパーとして利用される。
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